生徒の関心を深める課題解決志向
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――中1では動機付けに力を入れる。それから「プロジェクト」が始まりますか。
木村 中2からは、それらを深めて広げられるようテーマを決めてプロジェクトに取り組みます。例えば、一級建築士の方と一緒に新しい美術館をつくろうとしているチームがあります。美術館とはそもそもどのようなものか、面白い美術館はどのようにすれば実現できるか、と真剣に取り組んでいます。
他にはUCLAの卒業生で起業家でもある方に、米国の文化や経済を研究するプロジェクトを担当してもらっています。生徒が一つの州を選んで、中3生が知事で中2生が副知事になり、自分の州の経済問題などを調べて、必要な政策について議論しています。
――あまり公立の中学校では見掛けないアプローチですね。
木村 自分たちが未来をつくるんだ!と生徒が感じられる機会を提供するために、私たちに何ができるのかを「本気の大人」たちとともに考え続けています。また、恐竜大好きな中学生がいるのですが、先日、取材依頼があって記事になりました。研究手法も具体的に紹介されているので、探究や研究を進めている小中学生の参考になると思います。ぜひご覧ください。
この他にも、データサイエンスを駆使している兼業農家と野菜を育ててブランド化し、それを基に新たな体験を得ようという「農業×経済」。表現作家と一緒に遊び競技をつくって社会とつながる大会を開く「遊びクリエイト」などのプロジェクトが現在動いています。
――研究活動の場合、どのような「大人」が外部から来ることを想定していますか。
木村 ラボに関わる大人たちは、生徒に「教えたい」とか中高生に「何かしてあげたい」ではなく、これからの未来をどうつくっていくのか、次世代を担う生徒たちから「教えてもらいたい」「共に考えたい」という思いを持つ「本気の大人」に限定しています。
試行段階の現在動いている活動から例を挙げると、本校のすぐ近くにできた医学部専門予備校の「D組」取締役(校舎長)で、認定NPO 法人「ジャパンハート」顧問を務めている七沢英文先生が、公衆衛生学や終末期医療について考える「医療/命ラボ」を担当してくれています。
七沢先生のラボでは、地域医療も含めてこれからの医療の在り方を生徒と一緒に考えたいと、終末期医療の専門クリニックを訪問したり、新しい薬効成分から創薬を進めたいと、富山大学など大学の薬学部に行ったりしています。