そう考えると、石破首相がやることは次々と出てきます。とにかく、速やかに持論である(3)日米地位協定の改定の申し込み(野田氏と同意見)について研究会を発足し、(4)国連からの勧告(4度目)に従い、女性天皇を認める研究会も発足すべきでしょう(右派は、「バチカンの君主やチベットのダライ・ラマはずっと男性だ」と反論していますが、この2つの組織は国連に属していません)。

 と同時に、(5)アベノミクスの再検討も忘れてはいけません。そのために、日銀総裁の人選を開始することです。

石破自民復活への分水嶺
「現状こそが最大のチャンス」

 この5つの政策を参院選までに推進すれば、石破自民の支持率は相当回復します。野田立憲の支持率も上がるでしょう。次は衆参ダブル選挙にして、安倍派裏金議員の立候補がきつい状態にしておき、参院では裏金議員が重複立候補できないということで強い候補者以外は公認しなければ、その分、「隠れ自民」や国民民主の「風」を受けて当選しただけの自民党への鞍替え希望者を、相当入党させることができます。

 つまり、かつて石破氏が干されていた時期に堂々と口にしていた「安倍政治の清算」を本当に実現しないと石破政権は終わってしまうだろうし、実現すれば、あるいは実現の強い意志を国民に感じさせれば、名宰相になれる可能性さえあります。そのためには、安倍元首相の三疑惑(森友学園・加計学園・桜をみる会)に関する文書開示も指示して、安倍氏に近い官僚も含めて追い出す覚悟が必要です。

 さて、ここまで書いてきましたが、私はなにも石破氏の応援をしているわけではありません。立憲民主党および野党の関係者の多くは、自民党と手を組まずに自力で政権交替をしたいと思っているでしょう。それには、大きな切り札が必要になると私は思います。

 それは宗教法人への課税です。ある試算によれば、そのインパクトは消費税の税収の半分に達すると言われています。消費税は令和6年度で23.8兆円ですから、最低10兆円の財源ができるわけです。国民民主党が掲げている「103万円の壁」など、簡単に突破できるのです。

 もちろん、零細神社・仏閣からは税金をとらなくても構いません。重視すべきは、巨大新興宗教の収入です。創価学会や統一教会をはじめ、多くの宗教が自公の支持母体です。ここにメスを入れる政策を主張すれば、野党統一政権による政権交替もありえます。

 ことほどさように、昔に戻ることではなく、解散総選挙後の現状そのものが、新しい日本を作るチャンスだと考えるべきなのです。

(元週刊文春・月刊文藝春秋編集長 木俣正剛)