これを避けるためにも任せたあとの関わり方が重要になってくるのです。

 これは私自身が同じ経験をしたので気持ちがよくわかります。

 かつて、チームのメンバーに指示した仕事があり、数日経ってもメンバーは何の成果物も出してこなかったことがあります。

「遅い」と感じた私は仕方なく、メンバーに任せた仕事を自分で実行し、成果物を上長に提出しました。

 そのことを任せていたメンバーに事後報告すると「どうして私に任せられた仕事を勝手にやるんですか?私も取り組んでいたのに……私の時間は何だったんですか?」と言われました。

 同じようなシチュエーションがあったとき、あなたはどう返事をするでしょう?

『君が遅いから俺が代わりにやったんだろ?むしろ感謝してくれよ』

 メンバーの気持ちがわかっていないマネジャーであれば、こう返してしまうかもしれません。

 マネジャー側の願望として最も大きいのは「この仕事を早く成功させたい」です。ですから、メンバーに仕事を任せて成長させるより、早く成果を出すことを優先して行動してしまいます。

 ですが、それによってメンバーは成長しないばかりか、マネジャーへの不信感を募らせてしまうのです。

何故マネジャーになった途端に
部下の欠点ばかりが目につくのか

 プレイヤー時代には、ここまでお伝えしたようなことがわかっていて、だからこそ任せようとしたり、メンバーの自主性を尊重しようとする人もいるでしょう。

 ですが興味深いことに、なぜかマネジャーになった途端に、かつての同僚や部下の欠点ばかりが目につくようになることがあります。

 お互いにプレイヤーとして切磋琢磨していたときは同僚も部下も尊重し合っていたのに、立場が変わることで見え方まで変わってしまうのです。

 欠点ばかりが目につくと、どうしても感情的にイライラします。

 そして、上司としてそのような振る舞いを隠そうと表面上は笑顔だったり、優しい言葉を使っていたとします。ですが、マネジャーのイライラは全身から“見えないオーラ”として放たれていて、メンバーには伝わってしまいます。

 ニコニコしていても腹の中では「どうして仕事が遅いんだ」「どうしてこんなことがわかっていないんだ」「何度言ったらわかるんだ」という不満がたまっているわけですから、その状態でコミュニケートしても相手には伝わるのです。