ただ、市民がどのような根拠で「オールドメディアよりネット上の情報の方が信用できる」と思うに至ったかは、さらに分析されるべきだろう。

 SNS上では「何が本当かわからない」という書き込みをたびたび見かけた。デマの指摘に「何が本当かわからない」と返す人もいた。

 問題の一つは、検索しても操作された情報にしか辿り着けない場合があることだ。また、ネット上では新聞やテレビなどのマスコミの情報よりも個人サイトや個人Youtuberの出す情報の方が伝播しやすい場合がある。その具体例は次のようなものである。

新聞社やテレビ局の記事は
すぐ削除され、有料記事が多い

 新聞社やテレビ局の記事はYahoo!などに配信されるが、その配信記事は一定期間で削除されてしまう。また、新聞社のサイト本体で読もうとすると有料記事の場合が多い。少し前のニュースを検索しようとすると、すでに記事が消えていたり、課金しなければ読めなかったりする。これは大手紙から地方紙まで同じ傾向にあり、例外は産経新聞だ。

 結果的に、関連するキーワードで検索した場合に、これについて言及した個人ブログや動画ばかりが残ってしまっていることがある。情報は無料で手に入るわけではないのだから、当たり前といえば当たり前なのだが、しかし手っ取り早く検索で済ませたい人々のニーズに合っていないのは確かだ。

断定を避けるマスコミ、
断定を好むユーザー

 疑わしい状況で断定を避けるのはマスコミのリスクヘッジであり、読者に対する誠実さでもある。ただし、取材すればある程度の確度で書けるところを、取材をしないのであれば怠慢だ。

 一方、SNSによって情報発信がマスメディアのものだけではなくなった今、支持を得るインフルエンサーの中には、不確かな情報でも断定的に語る者もいる。「かもしれない」情報よりも、断定で強く言い切る方が人に響きやすいし、記憶にも残りやすい。