例えば、キャンピングカーのレンタルサービスを関東圏で新規に立ち上げるとしましょう。年齢、世帯構成、関東6都県の市区町村、余暇の過ごし方といった軸でセグメンテーション(クラスター分析)し、その中から「30代から40代で、郊外の持ち家に住み、月に1回以上アウトドアで過ごす夫婦または子育て世代」といった具体的なターゲットへ絞り込むなどが想定されます。

 つづくポジショニングは、ターゲット顧客を念頭に、競合他社と比較して優位となる独自性の高いポジションを具体的に描き、シンプルで伝わりやすいコンセプトを設計する活動です。つまり、自社製品やサービスの強みを、ターゲット顧客のニーズを捉えた「刺さる言葉」に置き換えて差別化を図っていくことに他なりません。

 先の例で言えば、自社の強みが、「日本の道路事情にあったコンパクトさや燃費の良さ」「快適でミニマルな装備」などであれば、ターゲットの具体的なニーズやペイン(不安や困りごと)を探り、「初めてでも運転が楽!コンパクトでミニマルなボディと内装。リモートワークに対応したデジタル対応」といった訴求で、カジュアルかつスマートに手ごろな旅を楽しみたいライトユーザー向けのポジショニングを確立することなどが考えられます。

 では、セブンとファミマの打ち手の違いを、STPの流れで見てみましょう。

王道のセブン
利便性・品質・信頼に根ざしたバリュー路線へ

 まず、業界最大手のセブン(全国2万1609店、24年10月末現在)のSTPをひもといてみましょう。

セブンイレブン出典:セブン&アイHD「国内CVS事業戦略」(10月24日発表)などを参考に筆者作成
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 セグメンテーションするにあたって、同社が重要な環境変化として真っ先に挙げたのは、「少子高齢化」、「単身世帯の増加」、「女性の社会進出」、そして「インバウンド需要」の4つでした。

 日本の課題は自社の課題と真正面から受け止め、高齢者や単独世帯の割合の変化といった人口動態、働く女性の増加に伴う行動特性、インバウンド特需が見込まれる地理的特性に目を向けて、新たに市場を細分化する試みといえます。

 つづいて、ターゲティングですが、大手の中でも総合スーパーや食品スーパーをグループに持つ同社は、そもそも多様な顧客へ対応できるだけの力があります。近年はその商品開発力を「コンビニで買える高級・高単価商品」へ振り向けていましたが、コロナ禍が明けてインフレ傾向が強まり、その路線を転換せざるを得なくなりました。