しかも、面での拡大には限りが見え始めています。そこで、経営資源をある程度絞り込んだターゲットへ集中させる方針を打ち出しました。
では、具体的にどんなポジショニングに落とし込んだのでしょうか。
セブンは、小売りと食品の分野で圧倒的な「便利さ」「品質」「信頼」を強調したポジションを確立してきました。24年スタートの新型店舗「SIPストア」はセブン(S)とイトーヨーカ堂(I)のパートナーシップ(P)を意味する頭文字です。
新たなターゲット向けに掲げるコンセプトは、王道の「ワンストップショッピング」。高齢者、働く女性、若者といった単独世帯の増加に合わせて、カウンター商品やホットフード、生活デイリー商品などの品揃えを強化し、「すぐに使える・食べられる高品質な商品が手に入る」というイメージの訴求で、競合スーパーとも差別化を図る戦略です。また、価格感度の高い若年層へ「うれしい値!」と銘打ったバリュー(お得)路線も注目です。
攻めのファミマ
デジタルネイティブ狙い撃ち戦略とは?
一方、長らく大手の中でもフォロワーと見られてきたファミリーマート(全国1万6253店、24年10月末現在)は、ちょっと違った発想で、近年、攻めの姿勢を強めています。
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ファミマは非上場のため、ニュースリリースの断片的な情報からの推測となりますが、同社がセグメンテーションにおいて特に意識している環境変化は、「ポストコロナの生活様式」「女性の社会進出」と「単身世帯の増加」とみられます。
というのも、ファミマは関西から中部地域で競合店を超える出店数があり、高齢者よりも共働き世帯や単身世帯の男女が顧客に多いのが特徴です。そのため、この世代の行動特性や心理的特性から分類して「デジタルネイティブ・キャッシュレス世代」であることや、「トレンドに敏感な若者」や「健康志向の高い30~40代女性」などがターゲティングのポイントになっています。
特に、デジタルネイティブ・キャッシュレス世代については、事業継続に直結する「労働人口の減少」との相乗効果も見越した自動化・省力化への理解があるターゲット選定ともいえます。
そして、ポジショニングとしては、全方位にこだわるセブンの間隙を突いて、ポストコロナに合わせたイートインの削減と新たな商品棚の増設によって、地域に合わせた日用品の品ぞろえ、ファミマブランドの衣類や女性に人気の高いGREEN SPOONとの共同開発となるスムージーなど「日常の必需品とトレンド商品が揃う便利な生活拠点」というユニークなポジションを強化しています。
また、自動化・省力化と相性の良いデジタルネイティブ向けにデジタルサイネージによる視覚的なプロモーションを展開しており、単なる物販にとどまらない「体験型メディア拠点」としての立ち位置を確立したい模様です。