コンビニは先行指標!
複雑さを増す国内市場でどう戦うのか?

 ここまで、セブンとファミマを題材にSTPの比較をしてみました。

 このように、消費の最前線でしのぎを削るコンビニ各社のSTPは、他の業種にとっての先行指標ともいえます。迫りくる限界市場において、持てる資源を効率的に使いながら、店舗数増など面を広げるだけではない新たな需要を掘り起こす……。これは、多くの業界が直面している課題です。新たな需要獲得のためのターゲット選定と顧客満足を満たすポジショニングの合わせ技によって、収益性改善の道を開くコンビニ業界に学ぶことは多いでしょう。

 今年4月、民間の有識者からなる「人口戦略会議」が公表した「令和6年・地方自治体『持続可能性』分析レポート」と題する一本の文書が世間に衝撃を与えました。それは、全国1724(24年10月末現在)ある自治体のうち、「744の自治体で、2050年までに20~30代の女性が半減し、最終的には消滅する可能性がある」との見立てが公表されたからです。これは実に全自治体の4割に相当します。

 消費財を扱う企業や小売りにとって、こうした将来推計は死活問題です。各地域のニーズに応じた機動力をいかに上げるかが求められています。背景にあるのは、日本全体の急速な「モザイク化」です。

 少子高齢化は確かに日本の課題ですが、それは全国一律に進むわけではありません。どの年代の単身世帯が増加しているのか、男女比に偏りはないのか、地域ごとの世帯年収や月額賃金などから分かる経済格差はどの程度かといった分析を重ね合わせることで、地域的な特徴を捉えておく必要があります。

 今の時代であれば、ちょっとした統計データの解析で簡単にクラスター分析をすることが可能です。詳しい説明は省略しますが、参考までに、政府の統計データをもとに筆者がクラスター分析したものを以下に提示しておきます。

 例えば、紫で示された東京・神奈川・福岡・京都などは高世帯年収、低い高齢化率、非常に高い単独世帯比率などの都市部の特徴を持ち、特に東京は若年層や現役世代が多い「都市型富裕層」といった特徴があります。また、紫に隣接する大阪は福岡や京都と似た現役世代の多い都市の特徴を持ちながらも、北海道・鹿児島などに近い世帯年収から、青のクラスターに分類されています。

 さらにクラスターごとに、いろいろな特徴がありそうです。みなさん自身で、ぜひ想像してみてください。

クラスター出典:令和6年版高齢社会白書、令和2年国勢調査、2019年全国家計構造調査より、 K-meansクラスタリング・5分類(標準化処理含む)を用いて筆者作成
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 全国で同じ特徴を持った大型のショッピングモールが賑わいを見せるのもあと数年かもしれません。全国が一つの市場ではなく、無数の小さな市場に分かれている状況。データを用いた視覚的な分析を通じて現状を把握し、このモザイクの断片に基づいて、少し先の未来を想像しながら自社に優位なポジションを確立する、そんなSTPの使い方がこれからの時代に求められています。