「チャットツールの書きこみ」をスルーしたら、パワハラになる?

【事例】
30代男性。職場ではリモートワークが進んでいるため、チームでの会話も基本的にチャットツールを使って行われている。積極的に発言するようにしているが、なぜか自分の発言だけ誰からも返事をしてもらえない。意見をスルーされるだけならまだしも、業務上必要な返事もしてもらえないため、業務に支障をきたしている。自分は上司から好かれていないと感じており、チーム内のメンバーは空気を読んで、自分に返事をしていない可能性がある。

【解説】
オンライン会議でのやり取りも、仕事に関するやり取りなのか、仕事以外のやり取りであるのかで区別する必要があります。

まず、仕事に関するやりとりであれば、「スルー行為」が仕事を進める上での支障となるのかどうかを検討する必要があります。

部下が仕事に支障をきたしている場合は、改めて上司に仕事内容の確認や対応を求めることになるでしょう。

確認や対応を求めても常に無視されるようであれば、意図的である可能性が高く、パワハラであると評価される可能性があります。

スルー行為が2~3回程度の場合はパワハラになる可能性は低い

他方、仕事を進める上でただちに支障がない場合、スルー行為が2~3回あった程度では、パワハラと評価される可能性は低いと思われます。

他方、やり取りが仕事に関係しない場合には、スルーされても業務には支障がないともいえ、職場環境がただちに害されることになりません。

単に仕事以外のやり取りで自分のコメントをスルーされているだけでは、違法なパワハラという評価は受けにくいと思われます。

「積極的に職場から排除したり孤立化させる行為」はパワハラになる可能性が高い

今回のケースのように、

・自分にだけ返事がないことが徹底されており、これが長期間にわたって何度も繰り返される
・他の人にも自分のコメントに反応しないよう働きかけがされている

などの場合には、「積極的に職場から排除したり孤立化させる行為」として、パワハラと評価される可能性が高まります。

[著者]梅澤康二
弁護士法人プラム綜合法律事務所代表、弁護士(第二東京弁護士会 会員)
2006年司法試験(旧試験)合格、2007年東京大学法学部卒業、2008年最高裁判所司法研修所修了、2008年アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所、2014年同事務所退所、同年プラム綜合法律事務所設立。主な業務分野は、労務全般の対応(労働事件、労使トラブル、組合対応、規程の作成・整備、各種セミナーの実施、その他企業内の労務リスクの分析と検討)、紛争等の対応(訴訟・労働審判・民事調停等の法的手続及びクレーム・協議、交渉等の非法的手続)、その他企業法務全般の相談など。著書に『それ、パワハラですよ?』(ダイヤモンド社)、『ハラスメントの正しい知識と対応』(ビジネス教育出版社)がある。