セリーナ:「良い質問です。ビジネスでのネマワシは、ヒトが持つ恐怖心をコントロールするものだと思うの」

森:「恐怖心?どういうことですか?」

 それからセリーナは15分かけて、ビデオ会議で共有できるホワイトボードまで使って、ネマワシの構造的なメカニズムを説明してくれました。(欧州生まれ欧州育ちでアメリカの大学を出たセリーナが、どうしてこんなにネマワシについて詳しいのかは、最後まで謎でしたが…)

 セリーナの説明をまとめると、以下の3つの恐怖心をうまくコントロールするとネマワシがうまくいく、ということでした。

(1)自分が知らないところで、自分に関わる重要なことが決まってしまうかもしれない、という恐怖心をコントロールする

・改革案の大筋を変えたり、承認・否決したりする権限がないことは知りつつも、自分が大きく影響を受ける改革案が、自分の知らないところで決まるのが不愉快、ムカつく、怖い。

・「そんなこと、私は聞いてないぞ!」という現象。

・ この恐怖心を和らげるには、情報共有をなるべく早めに行う。まだいろいろ決まっていない段階でも、「こんなことを検討しているんですよ」「こんな情報を集めています」ということだけでも報告しておけば、「自分は早い段階から情報共有されている」と安心する人が多い。

(2)自分の考え、アイデアが、誰かに否定されるかもしれない、という恐怖心をコントロールする

・自分が考えた改革案を成功させるための施策や、懸念点を解消するための改善策を、自分以外の誰かが否定することが不愉快、ムカつく、怖い。

・アイデアが否定されただけなのに、自分の人格まで否定されたかのように感じてしまう。

・単なる否定ではなく、建設的な批判や、より良くするための改良策であっても、言い方によっては「攻撃された!」と感じ、自己防衛本能による反撃がトリガーされる。

・この恐怖心を逆手に取って、うまく活用することを考える。改革に反対しそうな人を改革案のアイデア出しに呼んで、アイデアを出してもらう。その人のアイデアがうまく取り入れられた改革案にすると、改革案は「自分のアイデア」になるので、否定しないだけでなく、他の人が否定することを防ぐために改革案の良さを他の人にアピールし始めたりする。