上昇の「広尾学園」と緩和の「慶應義塾中等部」
港区には男女別学校は7校あるが、共学校は4校だけである。それでも、大学付属校と元女子校のリニューアル人気校という昨今の中学受験を左右する要因がそろっている。
港区に限らず東京の圧倒的な難関校といえば、今も昔も慶應義塾中等部(港区三田)だろう。慶應義塾大学三田キャンパスにも近く、女子受験生にとって、東京女子校御三家や豊島岡女子学園といった女子難関校に引けをとらないのは本校だけだろう。入試は3日に4科の一次試験を、5日に二次試験(体育実技と保護者同席面接)を行う。募集は男子約120人・女子約50人となっている。
2024年の受験者数は1071人(男子722人・女子349人)で、出願者数の8掛けだった。一次試験を通過して二次試験に臨んだ受験生は425人で、最終的な合格者数は198人(男子142人・女子56人)となり、実倍率は5.41倍となった。23年5.44倍、22年6.32倍、21年5.85倍、20年5.18倍と、年によって結構変動するが、5倍を割ることはない。四模試の志望者数は微減傾向で、25年はいささか緩みそうだ。
前身の順心女子学園から共学化したのが07年のこと。広尾学園(港区南麻布)は東京を代表する共学進学校の一つとなった。東京男子御三家の麻布と同じ東京メトロ日比谷線「広尾」駅が最寄りで、併願受験も多く見られる。帰国生入試と合わせて240人を募集する入試は、学内のクラス編成に合わせて、本科、医進・サイエンス、インターナショナルの三つのコースに分かれている。インターナショナルコースはさらに、AG(アドバンストグループ)とSG(スタンダードグループ)に分かれる。
[1日1回本科] (左は日程、右は入試名。以下同じ)は24年に350人が受験、実倍率4.55倍(23年5.3倍、22年4.11倍)と初回入試にしてはかなりハードである。志望者数は1割減で、25年は少し緩みそうだ。[1日午後2回]は「本科」と「インターナショナルSG」に分かれるが、志望者数は最多の522人と316人、実倍率は2.79倍(23年3.34倍、22年2.67倍)と2.47倍(23年3.06倍、22年2.95倍)で、1回よりはハードルが低い。志望者数は前年並みと1割強増で、25年は後者が2割台後半に向かいそうだ。
[5日3回]も1回同様の「本科」と「インターナショナルSG」に分かれる。受験者数は400人と204人で、5.71倍(23年8.08倍、22年4.76倍)と3.58倍(23年5.23倍、22年3.93倍)となっており、本科の倍率変動が激しい。志望者数は前年並みと2割半増である。
[2日医進・サイエンス回]は募集人員35人の3倍程度の合格者を出しており、24年受験者数381人に対して実倍率3.15倍(23年3.28倍、22年3.29倍)だった。志望者数は1割弱増えており、25年も3倍台は維持しそうである。[3日国際生AG回]は募集人員15人と少ないものの、広尾学園らしさが強く見られる入試回だろう。算数は英語での出題であり、英語と国語の筆記試験と個人面接が行われる。140人が受験して6.36倍(23年9.5倍、22年9.63倍)と最も狭き門である。ところが志望者数は実に5倍増となっており、25年に10倍を超えても不思議はない状況だ。