前述の馬淵さんも、低い収入に甘んじないと会社に残れないほど厳しい立場にいるのです。では、馬淵さんの収入はどれくらい減ってしまうのでしょうか。
現在は在職老齢年金制度により、65歳以上は月収と厚生年金の合計額が50万円を超えると、上回った分の半額の年金給付額が減額されます。馬淵さんは定年後、年収750万円(月54万+ボーナス100万)が470万円に減らされ、月39万円になってしまいました。しかし、年金月15万円を受給すると月収と年金の合計額が54万円を超えてしまうため、今後は受給する厚生年金が本来よりも減って、厚生年金は13万円しかもらえなくなります。
老齢基礎年金6万円は減額なしで受給できますが、大学生の子ども2人の学費も払わなければならず、これではとてもやっていくことができません。家賃を払うことさえ難しくなり、妻の実家に引越さなければなりません。それだけは嫌なので、安い賃貸に引越ししたり、もっと働いたりする必要があります。
かたや、役員になった同期生は月40万円近くもらっています。そのため、つい会社と交渉してみたのです。
会社にリストラされ就活
なぜうまくいかないのか?
結局、会社にいづらくなった馬淵さんは、1年後にリストラされてしまいました。途方に暮れて、人材ビジネス会社の求人サイトに登録しましたが、若い人向けで使い方が複雑です。履歴書を添付しても返事がなく、相手に届いたかどうかも確認できません。電話しても事務の受付担当にしかつながりません。
届いたか担当者に確認してもらうと、人材ビジネス会社に登録するための情報が不十分で、プロセスを進めることができないと言われ、職歴などの情報をさらに追加しました。ようやく履歴書を確認してもらい、キャリアカウンセラーに相談したいと申し出ると、オンライン面談ができるまで1カ月かかりました。さらに、希望する企業に履歴書を転送してもらっても、企業からの返事をもらうまで数週間、待機しなければなりませんでした。
結局、事務職を3社申し込んだけれど不合格。やむなくハローワークに足を運ぶと、人手不足の小売業を進められました。仕方なくコンビニで働いてみたものの、腰痛で1カ月しか続きません。オフィス事務で転職したいが、いまさら適職探しはできない。かつて在籍した会社のライバル社は雇ってくれないだろうし、もっと早くから対策をとっておけばよかった……そう悔やんでいました。