金融機関の商売に
乗せられてはいけない
私は基本的に、金融機関からすすめられる金融商品、金融サービスは、きちんと理解できないのであれば近寄らないほうがいいと考えています。それらのほとんど、感覚的にいうと9割はシニア世代のみなさんにとって必要がないものだったり、運用するには非効率なものだったりするからです。
なぜ、このような残念なすれ違いが起きるのでしょうか。
私のところへご相談に来た方々は、だいたい「担当の方はいい人だった」「すごく丁寧に説明してくれた」と言います。もちろんそうでしょう。金融機関の担当者は悪人ではありません。ただ担当者がアドバイザーではなく、セールス・営業員だという違いがあるだけです。
問題は個人ではなく、大手金融機関のビジネスの仕組みにあります。投資家の利益が金融機関の利益になるのではなく、投資家が儲けようが損しようが、取引や運用の手数料が利益になる。そして、ほとんどの担当者は定期的に転勤して、また次の担当者が新しい提案を持ってきます。何度も引き継ぎを繰り返せば継続したサービスは困難になります。それが金融機関の現状です。
金融の世界では1990年代頃から世界的に規制緩和や自由化、グローバル化が進み、IT技術の応用などもあって新しい商品が次々に開発されてきました。その結果、かつてはごく一部の大口投資家しか使えなかった海外への投資商品や高度なサービスが、個人投資家レベルでも利用できるようになりました。
個人ならできるだけわかりやすくてシンプルな運用が望ましいですが、中には非常に仕組みが複雑な金融商品やサービスも定期的に発売されます。それらも、お客様のニーズに応えるというのは建前で、実態は金融機関が手数料を新たに稼ぐための新商品であることが珍しくありません。
担当者はノルマを課された会社員
投資や運用のアドバイザーではない
窓口の担当者も、こうした金融機関の都合によるビジネスの仕組みの中にいます。基本的に金融機関で資産運用の相談をする場合は、その相談相手はセールス・営業員と呼ばれる職種の人たちです。投資や運用のアドバイザーではありません。