マスコミの偏向報道への疑問

 そして、今回の騒動で改めて確信したのが、マスメディアの偏向報道である。

 先の米国大統領選挙においても、メディアの報道と、現地在住者のブログやYouTubeを通して見聞きする情報には大きな温度差があったことを感じさせた。韓国でも同じように、メディアでは、尹氏の退陣を求める左派系団体が各地で行うデモや、尹氏を非難する国民の声ばかりが報じられている。

 反対に、右派系団体が行っている集会や、尹氏を擁護したり、李氏を批判したりする声が報じられることはほとんどない。あたかも、国民すべてが尹氏の退陣と政権交代を望んでいるかのような雰囲気が演出されているのだ。

反日政策「NO JAPAN」は、安倍氏がいたからこそ成功した?

 万が一、尹氏の弾劾と罷免が成立し、大統領選挙が実施され、「共に民主党」が政権を奪還するというシナリオが現実となった場合は、再び、日韓関係が悪化する可能性が高い。李大統領が誕生すれば、文在寅政権時代よりもさらに強硬な反日政策が推進されることが予想される。

 日本にとってはやはりこれが一番の懸念であろう。確かにその可能性は高く、韓国で暮らす日本人としては、またあの悪夢のような時期が来るのかと思うと嫌気が差すのは事実だ。

 しかし、かつて文政権下で「NO JAPAN」運動が成功したのは、単にその時の盛り上がりだけでなく、日本側のトップに安倍晋三氏という強力な存在があったからこそという側面もある。当時、韓国人に「NO JAPAN」について率直な意見を求めたところ、「この政策は日本の国民に対してではなく、日本政府、そのトップである安倍氏に対し抗議しているのだ」という返答があり、実に滑稽な主張だと思った。しかし思い返せば、確かに当時韓国の街中に掲げられた「NO JAPAN」の横断幕には、安倍氏の顔写真が大きくプリントされたものも多かった。当時の文政権にとって、簡単に妥協せず態度を崩さない安倍氏は、非常に手強い相手であると共に、国民を煽るターゲットとしてうってつけだったということなのだろう。

 安倍氏が首相の座を退いた後も、下火になりながらも「NO JAPAN」は続いていたが、安倍氏の後任であった菅義偉氏については、文政権も表立って言及することはなかった。