ネガティブなことを何度も繰り返し頭に浮かべていると、不安が生じやすくなる。当然、それは人生の素晴らしい側面を過小評価することにつながる。
つまり、人は良いことと悪いことを実際とは逆の比率で捉えている。たしかに、人生には困難がつきものだし、良い出来事と悪い出来事が起こる割合も変わることがある。
しかし全体的に見れば、前述の3対1の比率はほとんどの人に当てはまる。もし僕たちの心の状態が現実と一致しているとすれば、3/4の確率でストレスや不安ではなく穏やかな気分を味わっているはずなのだ。
幸い、セイバリングの研究分野を開拓した心理学者フレッド・ブライアントが僕に語ってくれたように、人は「様々な経験の意味づけを頭の中で切り替えられる」。セイバリングに関する研究から得られた教訓を活かすことで、自分の人生にポジティブなものがあることに気づき、それを長続きさせ、より有意義なものにできる。
つまり人生の意味は追い求めるものではなく、日常生活や身の回りにすでにあるものなのだ。大切なのは、それに気づくこと。セイバリングは、それを実感するための優れた方法になる。
1日の中で経験するポジティブな出来事を意図的に楽しむと、幸福感が増し、心が穏やかになり、目の前のことに没頭しやすくなる。
セイバリングは
人生の良い側面を楽しむ技術
ブライアントは、幸福度が非常に高い人には、ひとつ共通点があるという。それは、ポジティブな経験を深く味わう力があることだ。セイバリングのレベルが高いと、エンゲージメントが高まり、不安が和らぐ。ポジティブな経験を味わうという行為自体がその経験を長持ちさせ、ポジティブな出来事を味わう能力が高いと抑うつや人間関係上の不安が減る。また、ポジティブな経験を味わうのがうまくなるほど、家庭内の不和が減り、自己肯定感が高まり、挫折からも立ち直りやすくなる。
セイバリング能力の高さは、マインドフルネスやオプティミズム、知恵の高さとも相関している。