今、世界中で「ストイシズム」の教えが一気に広がっている。日本でも、幸せな金持ちとストイシズムの興味深い関係を描いた『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』が話題だ。著者は『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』がベストセラーとなり、「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出されたスコット・ギャロウェイ。日本で「GAFA」という言葉を定着させた全米屈指の人気教授が明かす「世界最先端の“お金と人生”の戦略」とは? 世界600万部突破『サイコロジー・オブ・マネー』著者モーガン・ハウセルとゴールドマン・サックスCEOがダブル推薦する全米ベストセラーより内容の一部を特別公開する。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)。

【今すぐプチ富裕層になりたかったら】「金融リテラシー」より「自制心」より大切なもの・ナンバー1Photo: Adobe Stock

私の人生の大半を
経済的自立から遠ざけていたもの

私の人生の大半を経済的自立から遠ざけていたのは、自分は特別な人間だという傲慢な考えだった。
ビジネスの世界で華々しい成果を上げていたことが、その考えを助長していた。

私は何社も会社を立ち上げ、雑誌で紹介されるほど世間の注目を浴び、自らが興したスタートアップのために何千万ドルもの資金を調達していた。

「自分は(どう考えても)並外れた存在だ」と思えた。
いずれIPO(新規株式公開)や企業買収によって、数億ドルとは言わないまでも、数千万ドルを手にできると(どう考えても)思えた。

それが実現しそうなチャンスを実際に何度か経験したことで、その確信は深まった。

もうすぐ莫大な金を手にできる! 光速へとジャンプするのは間近だ――そう確信していた私には、収入の範囲内で節度ある生活や貯蓄・投資をするという考えはさらさらなかった。

20代、30代のとき、年間1万ドルから10万ドルの貯蓄をすることは簡単だった。
だが、それをはるかに超えるお金が手に入るチャンスがすぐそこにあるのに、なぜ今の生活を犠牲にしてまでチマチマと蓄財しなければならないのか? そう信じ込んでいた。

私は間違っていた!
しくじった! 失敗した!

でも、その考えは間違っていた

その後、私は2000年のドットコム・バブルの崩壊や、離婚、2000年代後半の金融恐慌などに見舞われた。
私がおもいきり打ったボールは、フェンスに向かっているように見えても、ことごとくファウルになり、決してホームランにならなかった。

そして42歳のとき、長男が生まれた。
その瞬間、天使の歌声が聞こえただろうか?
私の人生に、家族向けのテレビ番組のような幸せな世界が訪れたのだろうか?

それとは正反対だった。

私は吐き気がして、まっすぐ立てなかった。
出産に立ち会い、血や叫び声を見聞きしたから気分が悪くなったのではない。
生まれてきたばかりの息子を見て、大きな後悔に襲われたのだ。

私はしくじった

本当なら、数百万ドルのお金が銀行口座に入っていてもおかしくなかった。
なのに、まったく貯蓄をしてこなかった。

私は失敗したのだ。

息子が生まれてくる数分前までは、その事実を受け止められていた。
なぜなら、自分自身が失敗しただけだったからだ。

だが、私は息子に申し訳ないことをしてしまったと気づいた。
それに耐えるのは難しかった。

私の失敗は選択ミスから生じたものであり、知識が足りなかったわけではない。

金融リテラシーか? 自制心か?

私はMBAを取得し、自社のために何百万ドルもの資金を調達し、社員にきちんと給料を支払い、四半期ごとに利益を出していた。
つまり私はお金のことを「理解」していた。

だが、それを扱うのが「ヘタ」だったのだ。
これは私だけの問題ではない。
多くの人が多額の借金を抱えてしまう背景には、金融リテラシーの欠如と自制心の欠如の両方がある。

しかし、イギリスの消費者を対象とした調査によれば、「消費者の過剰債務を説明するうえで、金融リテラシーの欠如よりも自制心の欠如のほうが大きな役割を果たしている」という。

経済的自立は頭の中での計算から生じるものではない。
それは行動パターンの結果なのだ。

過剰な借金につながる行動を避け、富につながる行動パターンを身につけるにはどうすればいいのか?
つまり、どうすれば自分の意図に沿った行動ができるようになるのか?

金融リテラシーより自制心より大切なもの

表面的には、そのためのカギは自制心であるように見える。
だが、何としても計画にしがみつこうとする意志の強さがあれば、経済的自立を達成できるのか?

常に衝動を抑えようとして自分と戦っていると、疲れてしまう。
何年にもわたって自分の意図と行動を一致させるには、自制心よりもっと深いところにある何かが必要なはずだ。

その答えは、端的に言えば「人格」になる。

資本主義社会の誘惑や、人間としての弱さ、挫折、不運などに直面したとき、意図したとおりの行動を取るには、忍耐力が求められる。
その忍耐力は、私たちが人格に根差した行動を取っている場合にのみ実現する。

もし、意図するだけで何の苦労もなく行動を続けられるなら、誰もが新年の誓いを守り続けられるだろう。
行動には、その人の人間性が表れる。
よくいわれているのとは違い、頭で考えればそのとおりに行動できるわけではないのだ。

本章では、人格を磨く方法について、3つのパートに分けて考察した。
参考にしてみてほしい。

(本稿は『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』の一部を抜粋・編集したものです)