「デザイン経営ネイティブ」に見いだす、数字やロジック以外の経営者の判断基準
クロストークの締めくくりでは、田川氏からゲストの両氏へ、「これまでの経験を踏まえて、デザインは経営にどう貢献しているか、デザイン経営とは何かについて、考えを聞きたい」と、この日のテーマが直球で問い掛けられた。
「一番の貢献は『感覚を口にすること』かもしれません。資本主義社会の中で、数字によって何かを証明したり、エビデンスのあるものを正義にしたりするのはたやすい。しかし、それだけではイノベーションは生まれません。抽象度の高い言葉をビジネスの俎上に載せ、経営者も『感覚』を議論できるようになるのが『デザイン経営』ではないでしょうか」(本間氏)
「経営者の仕事は“投資価値を判断して、結果に責任を持つこと”です。CEOはビジネスの投資価値を判断して結果を出すし、CTOはリソースの投資価値を判断して結果を出す。同様に、CXOはデザインの投資価値を判断します。メルカリはデジタルプロダクトを扱う会社なので、表示回数や配信率という結果に責任を負う。自分の意思決定次第で事業が右にも左にも振れることを自覚しつつ、日々ユーザーに憑依し、プロダクトと向き合っていなければ導き出せない判断を出し続けていく。それが私にとってのデザイン経営です」(成澤氏)
プロダクトやサービスを通じて社会や人々の生活を変革しようとするならば、ビジネスのロジックが整合性だけでなく、ユーザーの情緒まで深く理解する必要があるのはもちろん、抽象と具体、機能と体験、量と質など、異質なものをつなぎ合わせて価値を生み出していく必要がある。
イノベーション力を向上させるという観点からも、SANUやメルカリのように、経営の中心に当然のようにデザインを据えている「デザイン経営ネイティブ」の企業から、学ぶべき点は多いはずだ。