「同期のライバルに対して36.4%の人がおこなっている、ある行為があります」
そう語るのは、著書『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』がベストセラーになるなど、メディアにも多数出演する金間大介さんだ。金沢大学の教授であり、モチベーション研究を専門とし、その知見を活かして企業支援も行う。
その金間さん待望の新作が『ライバルはいるか?』だ。今の時代、「誰かと競う必要なんてない」「みんなで仲良くしないといけない」と考える人は多い。会社や学校でも、競争させられる機会は減った。その風潮に疑問を抱いた金間さんは、社会人1200人に調査を行い、世界中の論文や研究を調べた。すると、そこから「ライバル」という存在がもたらす意外な影響が見えてきた。この記事では、本書より一部を抜粋・編集して、調査で判明した「同期のライバルとの意外な向き合い方」を紹介する。
「同期がライバル」20.6%
現在の日本では、人材(とくに若手人材)の確保や育成に関する議論が活況を呈しているが、ことライバルに関する調査や論考は驚くほど少ない。
この辺りには、現在の日本の「競争より協調」「競い合いより助け合い」「個人よりみんな」といった風潮が影響しているように思う。
そんな中、僕の研究以外にも1つだけ先行調査を見つけたので、敬意をもって引用させてもらおう。
紹介したいのは、主に「マイナビ転職」サイト内で運用・展開されている「シゴトサプリ」が2017年に行った調査で、首都圏の20代から40代の社会人男女を対象としたアンケートだ。計640名がこれに回答している。
この調査によると、「仕事のライバルとしてあなたが意識している人はいますか?」という問いに対し、「いる」と答えた人は42.8%となっている。
ライバル視する相手としては、やはり同期が圧倒的だ。回答者の20.6%が「同期がライバル」だと答えている。
「同期のライバル」と
どう向き合っているのか?
そして僕がこの調査で最も興味深いと思っているのが、「同期のライバルに対して行うことは?」という問いに対する回答結果だ。
結果を見てみると、「情報交換をする」が最多ではある。
しかしこれは選択肢としての概念が広く、曖昧な印象だ。つまり得票しやすい選択肢であると言える。
ただその後も、「業務のアドバイスをし合う」「業務に関する相談をする」「業務外(キャリアなど)の相談をする」が続く。
なんだ、普通に仲良いじゃん。
そう思えるような結果だ。
50.7%がライバルと「プライベートな相談」までしている。
ライバルと認める以上、仕事上での能力を認めていることとほぼ同義であり、(プライベートな相談は別にして)しっかりと助言を求める姿は「頼もしい」「ライバルって良いじゃん」と感じる。
36.4%が回答した「裏切り」
ただし、ここではもう1つ注目しておきたい回答項目がある。
それは「情報を独占する」だ。
なるほど、ライバル関係は仲良さげに見えるが(実際、全体的にはそうなのだが)、ちゃんとバチバチしている人たちが36.4%もいるではないか。
よしよし、そうこなくては。
せっかくのライバル研究が、「悪い人がひとりも出てこないドラマ」で終わってはつまらない(個人的に人の「ダークサイド」は嫌いじゃない)。この点は、あらためて後の8章で論じてみたい。
(本稿は、書籍『ライバルはいるか?』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)
書籍『ライバルはいるか?』では、社会人1200人に行った調査や、世界中の論文や研究からわかった「競争」の認識が変わる様々な事実が掲載されています。この本で、ライバルとともに切磋琢磨する「充実した人生」を手に入れましょう!
★仕事の満足度が高まる★
★自分の成長を実感できる★
★人生の停滞感を打破できる★
研究者が1200人を調査して解明。
知れば人生が変わる
「競争」の真実!!
誰かと競うことは本当に「悪」なのか?
1200人を徹底調査してわかった「意外な真実」!!
★ベストセラー『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』の著者、渾身作!!
現代では「みんな仲良く」が正義とされ、「競争」は徹底的に排除された。しかし、本当に競争は「悪」でしかないのだろうか?
そこで1200人を対象に調査を行い、世界中の研究や論文を調べたところ、驚くべき真実が見えてきた。
「競争」から逃げて、実力を秘めたままでいるか。
「競争」の力を借りて、実力以上を発揮するか。
賢く選ぶために知っておきたい真実を、この本でお伝えしよう。
第1章 ライバルは敵か、味方か―1200人調査で判明した意外な事実
たくさんいる人たちの中で、どこか気になる存在/ライバルは相反する感情をもたらす/1200人のライバル実態調査の結果から/ライバルはどこに現れる?/「幸福度」に関する驚きの調査結果……など
第2章 現代からライバルが消えた理由―こうして日本社会は競争を葬った
「競争相手」のいない世界/競争は、いつから「悪」になったのか?/「みんな仲良く」という時代の副作用/「無菌状態化」する日本企業の職場環境/競争がなくなったことで失われた光景……など
第3章 ライバルの真のイメージ—それは本当にネガティブな存在なのか
負けることは、恥ずかしいことなのか?/1151人が抱くライバルのイメージ/ライバルがいない人ほど、ライバルを「恐れる」/ライバルがもたらす、大切な「ある感情」……など
第4章 ライバルがいるから頑張れる―意欲と満足度に与えるプラスの影響
入社3年目の「社内マップ」/ライバル観の4つのタイプ/なぜ若手にとって「目標型ライバル」は重要なのか?/統計に表れた「ライバルの有用性」……など
第5章 ライバルこそがあなたを成長させる―競争の果てに得る4つの成長実感
スーパー技術者たちの戦い/なぜ勝者も敗者も、同じ感情を抱くのか/ライバルの有無と成長実感の関係/あの人がいなかったらここまで来れなかった……など
第6章 恋のライバルと戦う—敗北は人生に何をもたらすのか
人が恋に落ちる瞬間/エスカレーターの一段に無限の宇宙を感じる/「恋のライバル」という残酷な存在/4人の恋の結末……など
第7章 ライバルの効能を科学する—世界の研究が明らかにした成功との相関
25秒もタイムが縮まったランナー/膨大な先行研究から導き出した2つの有用性/「比較された従業員」が辿る、正の道と負の道/ライバルのいる人といない人、どちらの年収が上か……など
第8章 ライバル意識のダークサイド―敵対心という心の闇との向き合い方
アメリカで出会ったイケメンの友だちと天才/勝たなければいけないという気持ちが行きつく先/「勝利至上主義」の是非とライバルに対する敵意/「足を引っ張る」ことに喜びを感じる日本人/どんな人が現れても、揺さぶられない自分でありたい……など
第9章 自分という最強のライバル—勝者であり続ける人が戦っているもの
ライバル研究「最大の疑問」/「若くして頂点を極めると成長が止まる」は本当か/藤井聡太がダークサイドと決別した瞬間/364日は「過去の自分」の勝ち/過去の自分に勝つ方法……など
第10章 ライバルと手を組むとき―最高のチームが誕生する瞬間
真に「競争から協調へ」が実るとき/「チームの一員としてふさわしいか」というプレッシャー/この世界は個人戦でできている/自分にしかできない何かを見つけるために……など