ライバル関係は「バチバチ型」から「友だち型」へ
この『SLAM DUNK』と『ハイキュー!!』におけるライバル関係の描写の違いが、まさにこの30年で日本が経験してきたライバル観の変化を端的に、かつ極めて的確に表している。
「バチバチ型」から「友だち型」へ。
ライバル関係を柔らかく描写することで、多くの人に受け入れやすくしてきた。まさに目指すべきは「嫌な人がひとりも出てこないストーリー」。ライバル関係の描写は、そんな現在の日本人の嗜好をわかりやすく反映している。
なぜこの30年間で、こんなにも変化してきたのか。詳しくは、拙著『ライバルはいるか?』(ダイヤモンド社)で論じているので、ご参照いただきたい。いかにして競争そのものが「悪」とされ、日本社会から排除されてきたかを論じている。
ライバル関係でしか得られない充実感や幸福感がある
本原稿の文字数限界が近い。まとめに入りたい。以下はまとめであり、同時に僕が今、最も伝えたいことでもある。
上記の2作は、30年以上の時代差がありながら、きわめて多くの共通点を持ち、青春スポーツ作品の普遍性を匂わせる。そんな中、ライバル関係の描写は、驚くほど異なっている。むしろ真逆と言っていいくらいだ。
ただし、そんな差異点だらけのライバル関係において、両作品で共通している点が1つだけある。
それは、「相手を認めている」ということ。
これは、僕のライバル研究においても確認された、大きな発見の1つだ。
ライバルこそ、相手を認めている。
このことは、僕たちが生きる上で、他の何かでは決して代替できない、とても貴重な充実感であり、幸福感だと思う。
ライバル関係でしか得られない充実感や幸福感がある。
くどいようだが、これが僕のライバル研究から得られた1つの結論だ。だからこそ僕たちは、ライバルから認められるために、あらゆる努力を惜しまない。
拙著では、この他に、
・ライバルの存在こそ、あなたの人生を豊かにする
・ライバルがいる人の方が、幸福度が高く、充実した人生を送っている
・ライバルは怖いものでも何でもなくて、むしろ人生を充実させてくれる唯一無二の貴重な存在
といった点を示していく。ご興味をお持ちの方は、手に取っていただければ幸いだ。
(本稿は、書籍『ライバルはいるか?』の著者・金間大介氏による書き下ろし記事です)
書籍『ライバルはいるか?』では、社会人1200人に行った調査や、世界中の論文や研究からわかった「競争」の認識が変わる様々な事実が掲載されています。本書を読めば、「競争」を力に変えて、「充実した人生」を手に入れられるでしょう!
★仕事の満足度が高まる★
★挑戦する勇気をもらえる★
★人生の停滞感を打破できる★
研究者が1200人を調査して解明。
知れば人生が変わる
「競争」の真実!!
誰かと競うことは本当に「悪」なのか?
1200人を徹底調査してわかった「意外な真実」!!
★ベストセラー『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』の著者、渾身作!!
現代では「みんな仲良く」が正義とされ、「競争」は徹底的に排除された。しかし、本当に競争は「悪」でしかないのだろうか?
そこで1200人を対象に調査を行い、世界中の研究や論文を調べたところ、驚くべき真実が見えてきた。
「競争」から逃げて、実力を秘めたままでいるか。
「競争」の力を借りて、実力以上を発揮するか。
賢く選ぶために知っておきたい真実を、この本でお伝えしよう。
第1章 ライバルは敵か、味方か―1200人調査で判明した意外な事実
たくさんいる人たちの中で、どこか気になる存在/ライバルは相反する感情をもたらす/1200人のライバル実態調査の結果から/ライバルはどこに現れる?/「幸福度」に関する驚きの調査結果……など
第2章 現代からライバルが消えた理由―こうして日本社会は競争を葬った
「競争相手」のいない世界/競争は、いつから「悪」になったのか?/「みんな仲良く」という時代の副作用/「無菌状態化」する日本企業の職場環境/競争がなくなったことで失われた光景……など
第3章 ライバルの真のイメージ—それは本当にネガティブな存在なのか
負けることは、恥ずかしいことなのか?/1151人が抱くライバルのイメージ/ライバルがいない人ほど、ライバルを「恐れる」/ライバルがもたらす、大切な「ある感情」……など
第4章 ライバルがいるから頑張れる―意欲と満足度に与えるプラスの影響
入社3年目の「社内マップ」/ライバル観の4つのタイプ/なぜ若手にとって「目標型ライバル」は重要なのか?/統計に表れた「ライバルの有用性」……など
第5章 ライバルこそがあなたを成長させる―競争の果てに得る4つの成長実感
スーパー技術者たちの戦い/なぜ勝者も敗者も、同じ感情を抱くのか/ライバルの有無と成長実感の関係/あの人がいなかったらここまで来れなかった……など
第6章 恋のライバルと戦う—敗北は人生に何をもたらすのか
人が恋に落ちる瞬間/エスカレーターの一段に無限の宇宙を感じる/「恋のライバル」という残酷な存在/4人の恋の結末……など
第7章 ライバルの効能を科学する—世界の研究が明らかにした成功との相関
25秒もタイムが縮まったランナー/膨大な先行研究から導き出した2つの有用性/「比較された従業員」が辿る、正の道と負の道/ライバルのいる人といない人、どちらの年収が上か……など
第8章 ライバル意識のダークサイド―敵対心という心の闇との向き合い方
アメリカで出会ったイケメンの友だちと天才/勝たなければいけないという気持ちが行きつく先/「勝利至上主義」の是非とライバルに対する敵意/「足を引っ張る」ことに喜びを感じる日本人/どんな人が現れても、揺さぶられない自分でありたい……など
第9章 自分という最強のライバル—勝者であり続ける人が戦っているもの
ライバル研究「最大の疑問」/「若くして頂点を極めると成長が止まる」は本当か/藤井聡太がダークサイドと決別した瞬間/364日は「過去の自分」の勝ち/過去の自分に勝つ方法……など
第10章 ライバルと手を組むとき―最高のチームが誕生する瞬間
真に「競争から協調へ」が実るとき/「チームの一員としてふさわしいか」というプレッシャー/この世界は個人戦でできている/自分にしかできない何かを見つけるために……など