エロい広告が身近すぎる問題

滝乃:日本の広告規制についてはどう思いますか? わたしは以前、自分が担当していた漫画がゲーム化されたときに、親御さんから「ゲームをインストールしたらいやらしい広告が表示される」とクレームが来て驚きました。

犬山:えっ、子ども向けのゲームに、エロい広告が表示されていたということですか?

滝乃:対象年齢3歳からのゲームです。それなのに、露骨に性的な内容の広告が使われていました。女性キャラの胸やお尻をタップするとゆれるような動画を使った広告でしたが、成人指定にならないようにギリギリを攻めてるんですよね。クレームを受けてすぐ開発会社に「広告の年齢制限を3歳からに変えてくれ」と連絡して対応してもらいました。子ども向けゲームなのに、広告を作る側もつける側も感覚が麻痺しているように思います。

犬山:広告規制の対応が遅れているなと感じます。わたしは以前、アダルト広告に疑問を感じて「#政治家はネットのエロ広告規制に動いて下さい」というハッシュタグを走らせたことがあります。それで政治家の方が動いてくれたんですが、結局、フィルタリングの強化と広告ブロッカーを入れましょう、という話になってしまって。

滝乃:なんでこちらが対策しないといけないんでしょうね。それに、親がいくらフィルタリングや広告ブロッカーを入れても、完全には防げないことが多いです。

犬山:そうなんです。うちも子どもが使うiPadには広告ブロッカーを入れているんですが、それでもすり抜けてきます。ギリギリ18禁にはならないけど、明らかに不適切な内容の広告が多いんですよね。

滝乃:無料で使えるアプリやゲームが増えている分、広告に頼らざるを得ないのはわかりますが、その内容の基準が曖昧だと困りますよね。

犬山:子どもがスマホを持つようになったら、いくらフィルタリングをしようがすり抜けて目に入る。ゾーニング(すみ分け)をしっかりしてほしいですね。女性向けコンテンツももちろんそうです。親が個別に対策するだけでは限界がありますから。

結局「性教育をしよう」という話に戻ってくる

犬山:そして、性教育をもっとしっかりと行うべきだなと感じます。今の子どもたちは、ネットを通じて色々な情報に触れやすい環境にいますよね。だからこそ、「こういう表現はフィクションだよ」とか、「これは現実とは違うよ」といったことを教える必要があります。

滝乃:本当にそう思います。性教育に立ち返る必要がありますよね。

犬山:わたしたち世代は、性教育をちゃんと受けていなかったから「性」というものを隠すべきものとか、恥ずかしいものだと思いがちですよね。その影響で、性教育自体に抵抗を感じてしまう親御さんも多いんだと思います。

滝乃:性教育が親御さんにとって難しい問題だというのは、児童書を作っていても感じます。でも、「性の話を子どもにするのは抵抗がある」「学校で教えてもらえばいい」と性教育を後回しにしている間に、インターネットや広告を通じて歪んだ情報が子どもに入って、性犯罪に繋がってしまうこともあるんですよね。

「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」はひとつの目安になる

滝乃:『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』の中でタレントのSHELLYさんが紹介されていた、ユニセフなどが共同で発表した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」は参考になりますね。例えば9歳から12歳までに妊娠の知識や避妊方法を教える、という目安が示されています。

犬山:しっかりと性教育を行った地域では、性行為を始める年齢が上がったというデータもあります。

滝乃:リスクを知れば、慎重になりますし、「押さえつけられている」と感じるよりも、「なるほど、こういうことなんだ」と納得することで、子どもたち自身が考えて行動できるようになりますよね。

※本稿は『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』に関する書き下ろし対談記事です。