「孫」がカギになることも
ちなみに、被相続人の子供の配偶者(嫁と婿)、そして孫は法定相続人ではないため7年ルールは適用されず、“抜け道”となる可能性がある。
「しかし嫁や婿に贈与すると、離婚した時に財産を持っていかれるリスクがあります。
また、孫への贈与の場合、長男の子供は3人、長女は1人、次男は子供がないなど、孫の人数で不公平な配分になるため、金額を調整するなどしてバランスを考える必要があります。
また、子供が先に亡くなって孫が代襲相続人になった時などは、孫への贈与が相続財産に加算される可能性があります」(杉江税理士)
生前贈与と同時に、「相続時精算課税制度」も変更された。
相続時精算課税制度は、2500万円までを非課税で贈与でき、相続が発生した時(被相続人が亡くなった時)に課税される制度だ。納税の先送りをしているだけに思われるが、財産を早期移転できるメリットがある。
変更により、2500万円の枠内で年110万円までは非課税で贈与できて、相続時に課税されることもなくなった。
通常の生前贈与は、被相続人が7年以内に亡くなれば相続財産として課税されるが、「相続時精算課税制度」の利用を税務署に届け出れば、年110万円の贈与は7年以内に亡くなっても課税されなくなった。
国としては、生前贈与を相続時精算課税制度へ移行していく意思があると言われるが、メリットが分かりにくい上に制度が複雑なため利用者は増えていないという。
7年後に自分が生きているのかは誰にもわからない。だからこそ、事前の相続対策は早すぎるくらいがちょうどいいのかもしれない。
大分市出身。大学在学中に1992年「サンパウロ新聞」(サンパウロ)、卒業後1997年から2004年「財界展望」編集記者、2008年から2018年まで「週刊文春」記者、現在はフリーランスのライターとしてマネー、経済分野を中心に幅広く執筆を行う。著書に『国税OBだけが知っている失敗しない相続』(文春新書)、取材・構成『日本人の給料』(宝島社新書)などがある。