病院相手の商慣行が不正の元凶?
子会社のガバナンス改善が必須
その理由の一つは、医療機器業界の商慣行にある。医療機器メーカーの顧客は医療機関が多く、官公庁や民間企業を相手にするビジネスとは勝手が異なる。中規模病院に勤務する整形外科医は、商慣行の実態をこう明かす。
「いつも出入りしている医療機器メーカーの営業と仲良くなることは珍しくない。機器を購入しても自分の懐が痛むわけではないので、『この人から買ってあげようかな』と思ってしまう。HOYA Technosurgicalの事件が全くの人ごととは思えない」
医療機器メーカーは大手企業の子会社が多いことも一因として挙げられよう。本特集の#1『日立・東芝・パナは撤退、ソニーはオリンパスとタッグを組むも多難…医療機器業界「最新勢力図」を大公開!見えた日本勢の勝ち筋とは?』で述べたように、国内医療機器業界は兼業が多いのが特徴だ。兼業メーカーの本社がメディカル事業の特異性を分かっていなければ、ビジネスは子会社に任せっきりになってしまう。そうなれば、本部の統率が及びにくくなる。
実際、不祥事を起こしたゼオンメディカルとHOYA Technosurgicalは、それぞれ日本ゼオンとHOYAの100%子会社だ。日本ゼオン関係者は「ゼオンメディカルは不祥事を起こしている上に、親会社とのシナジーも大きいとはいえない。日本ゼオンは人を切らない文化なので、メリットがなくてもメディカルを抱え続けるのかもしれない」と不安を口にする。脛に傷を持つ医療機器事業にメスを入れられるのか。日本ゼオンには覚悟が求められる。
日本ゼオンやHOYAに限らず、メディカル事業の子会社を持つ企業には、事業の実態を把握し、これまで以上にガバナンスを利かせることが求められよう。国内医療機器市場の成長には、業界内の不祥事は足かせとなるばかりだ。
Key Visual by Noriyo Shinoda, Akiko Onodera