小惑星探査機「はやぶさ2」のプロジェクトマネージャーで知られる宇宙科学者の津田雄一先生(49歳)や世界で初めて動物が言葉を話すことを突き止めた生物学者の鈴木俊貴先生(41歳)などがおられますね。ご記憶の方も大勢おられるでしょうが、今年の卒業式の卒業生代表の答辞は、これぞ桐朋!というほどに秀逸でした。是非、皆さんにも全文を読んでいただきたいですね。

――東大文科二類に進学された土田淳真さんの答辞ですね。X(旧Twitter)上でも「ものすごい名文」「胸が熱くなる」と絶賛されていました。

 やっぱりガチガチの進学校で、ひたすら勉強だけをやっている子からは、ああいう発想は出にくいと思うんですよ。このような多才でちょっと光った子が育つのは自由な校風の中で自分の好きなことができて、なおかつ、自然や設備の環境が整ってるから。校内でいろんな刺激を受けているからこそじゃないですかね。

 桐朋は進学校でありますが、先ほどの地学もそうですし、カリキュラムも主要教科だけでなく、芸術科目もしっかり履修するんです。やっぱり、そういう多少緩い雰囲気があるのも特徴だと思いますね。
 
――自由な校風といえば、桐朋高校には制服がありません。

 この学校は中学生と高校生との間にメリハリがあるんですね。基本的には自由を重んじる学校なので、校則のようなものはありません。中学生は制服がありますが、高校生は私服が認められています。生徒たちに段階的に裁量を渡していくんです。

 こういうスクールカラーだからこそ学校行事も盛んだし、クラブ活動も熱心です。

 学校のエリアが国立市。学校の近くには一橋大学しかありませんから、遊ぶところなんかないんですよ。結局、生徒は学校で遊ぶんです。 しかも、そんなに勉強熱心じゃないですから、高校生もギリギリまで予備校に行こうとはしません。桐朋生同士で過ごす時間が多いから、仲良くなりますよね。

――生徒さんはすごく楽しそうです。

 そうなんですよ、合う子にとっては満足度が相当高い学校になるでしょう。東京中心部からは離れた土地ですから、余計な雑音もない。男の子にとっては、そういう空気もいいのかなっていうふうに思っております。

広野雅明さん
SAPIX教育事業本部本部長。SAPIX草創期から、一貫して算数を指導。算数科教科責任者・教務部長などを歴任。現在は、入試情報、広報活動、新規教育事業を担当。