政策活動費の全廃に
なぜ反対したのか
池上 一方で、少数与党として野党の意見を聞き入れて、これまでの自民党からするとかなり思い切った決断もしましたね。政策活動費の全廃が明記された政治改革関連法案が昨年12月24日に可決されました。党内でもいろいろな声があったと思いますが。
石破 さまざまな声がありました。政策活動費は要するに領収書が要らないものだと法律で決まっていたのですが、今回の法改正で廃止されることになりました。
私が国会答弁で言っていたのは、例えばDVの被害者からお話を伺う際、被害者のお名前が分かってしまうとか、あるいは企業との取引があった際に、特定の企業が自民党と深く付き合いがあるようだと分かってしまうと、相手が不利益を被ることもある。そのため、非開示にしたい部分がどうしても出てくるのです。確かに領収書なしの活動費は何に使われたか分からないのは確かですが、とはいえ開示すべきでない情報もある。
あるいは外交に関していえば、政府は表にできる範囲だけで外交をやるわけではない、ということです。外交交渉の相手が国ではなくて党、ということもあれば、国交がない国とのやりとりもあります。
そうしたものの全てにおいて領収書を公開するとなった場合、誰がいつどこで誰に会ったかという情報が集積することで、外交戦略が明らかになってしまう懸念がある。つまり外交関係や国益を毀損することにつながりかねないわけです。
そのため、政策活動費については各党の推薦者が委員を務める監査委員会が中立で厳正な監査を行い、開示すべきものはする。だから全廃せずともよいのではないかと頑張ったのですが、やはり駄目だということになりました。
池上 なるほど。
石破 しかしそうなると、今度は政策活動のための費用が官房機密費から出ることになり、これは一切非開示ですから、透明性は低下するのではないかとも主張しました。が、くどいようですが少数与党なので多勢に無勢、通らなかったのです。
企業・団体献金の廃止に
なぜ反対するのか
池上 企業・団体献金については立憲民主党などが廃止を求めていましたが、2025年に持ち越しになりました。
石破 これについては全て廃止といわれてしまうと、やはり反論せねばならない部分があります。有名な八幡製鉄事件、南九州税理士会事件などの判決が一つのスタンダードになっていますが、企業や団体も社会活動の主体であり、実現したい国益や政策があると。
それぞれの構成員は参政権を持ち、税金を納めていますから、企業が政治的意思を表明する上においては、憲法第21条の表現の自由というものに根拠を求めており、政治献金は認められるというのが判決の趣旨であり、私は今でもそれは正しいと思っております。もちろん節度は必要です。
これはまだ決着がついておらず、通常国会でも議論になるでしょうから、「どうしても譲れない」というものは、わが党の主張をきちんと述べた上で議論していかねばと思っています。