サイゼリヤの国内店舗が稼ぎ出した第一四半期の営業利益は約5億円でした。一方で上海、広州、北京の中国本土3法人を合計すると営業利益は約22億円。香港の法人が約5億円で、シンガポールが約3億円と、やはり圧倒的にアジアでお金を稼いでいるのです。

 そしてアジア各地の法人は利益率で突出しています。日本国内のサイゼリヤの売上高営業利益率は1%と薄利多売になっている一方で、上海は18%、台湾は17%、シンガポールが15%に広州は14%という高い数字です。

 これは先述したように上海や広州で既存店売り上げが前年比割れしたにもかかわらずの数字で、既存店売り上げが増加した台湾、シンガポールと変わらない高利益率を中国本土でたたき出しているのです。

 一方の日本国内事業は実は2024年に5年ぶりに赤字から黒字へと転換したところです。コロナ禍で打撃を受け、そこに円安での原材料費上昇がさらに試練を与えた形でしたが、企業努力で売り上げを伸ばし、メニューを絞って生産性を上げ、1%の黒字まで持ってきたところなのです。

 経営戦略の視点で見れば、サイゼリヤは中国本土にもっと投資をすべきです。

 たとえ既存店売り上げがここからさらに2割減ったとしても黒字になる事業構造です。国内の売上高が約400億円なのに対して中国本土が約150億円しか売り上げがない状況で、ここからどれくらいのスピードで中国の店舗規模を国内と同じところに持っていけるかが問われる状況です。

 サイゼリヤの未来にもし死角があるとしたら、中国で年率1割のスピードでしか出店できないその拡大スピードの遅さに課題があると私は捉えています。

視点3
日本でのデフレの歴史との対比

 さて、日本ではデフレの勝ち組だったサイゼリヤが、中国では消費減速とともに売り上げを減らしているという事実は、読者の方々に一抹の不安を覚えさせる数字かもしれません。

 この先の未来はどうなるのでしょうか。

 このことを理解するために、日本でのデフレ経済突入当時の状況を振り返ってみます。