そのプラットフォームに積まれるパワートレーンはどんなものか。モータースペックは156ps/270Nm、リチウムイオンバッテリーは54kWhの容量で、一充電航続距離は486kmに達する。充電方法は普通充電と日本向けの急速充電に対応する。もちろん、これはフィアット600eも同じ。バッテリー、インバーター、モーター、ケーブルといったパーツも共有する。ただ、600eの一充電航続距離は493kmとアベンジャーよりほんの少し長い。理由は定かではない。フィアット600eとアベンジャーのローンチエディションを比べると、車両重量は1580kg、ホイールサイズも同じ18インチだ。となると、空気抵抗値の違いなのかもしれない。
アベンジャーには独特の開発プロセスがある。それはテスト走行200万kmの中にオフロード走行が含まれていることだ。ジープ・ブランドしてのお約束だろう。悪路での走破性を目的とした装備が装着されている。床下のバッテリーを保護するアンダーボディのスキットプレートがそれ。たとえFWDであろうともそこはジープとしてのこだわりだろう。
こだわりついでに記しておくと、四駆でなくともアベンジャーには路面状況に応じて各種制御を最適化する“セレクテレイン”が搭載される。トラクションとブレーキ(回生を含む)を統合制御して路面状況に適した走りを提供する機能だ。具体的にはノーマル/エコ/スポーツ/スノー/マッド/サンドといった具合。四駆ではないので限界はあるが、彼らが長年培ってきた叡知がそこにある。
ここまでハードウェアの話をしてきたが、フィアット600eと同じプラットフォームながらアベンジャーにはジープらしいデザインが施されているのもウリ。グランドチェロキーに代表される都会的なジープ顔がこのクルマにも採用された。2022年に発表されたコマンダーに似たクールなデザインだ。ただ、インテリアはもっと工夫がほしいところ。メータークラスターまでフルデジタル化されたのはイマドキだが、少しシンプルで色気がない。何かもう少し個性をアピールしてもよかったと思う。