【親が認知症】家族でもお金を引き出せない!? 対策を徹底解説!
総務省の調査によれば、老後1か月の生活費は、60代の世帯で約30万円、70代以上の世帯で約25万円かかると言われている。仮に90歳まで生きるとすれば、60歳からの30年間で9600万円が必要になる(30万円×12×10+25万円×12×20)。病気や介護といった問題も無視できない。
本連載は、終活や相続に関するノウハウを紹介し、「お金の不安」を解消するものだ。著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超えている。この度、5000人の声を集めたエンディングノート『ぶっちゃけ相続 お金の不安が消えるエンディングノート』を出版する。銀行口座、保険、年金、介護、不動産、NISA、葬儀といった観点から、終活と相続のリアルをあますところなく伝えている。お金の不安を解消するためのポイントを聞いた。

【親が認知症】家族でもお金を引き出せない!? 対策を徹底解説!Photo: Adobe Stock

「認知症」と「終活」を考えよう

 本日は「認知症と終活」についてお話しします。年末年始、家族で集まった際、終活について話し合った方もいらっしゃるかと思います。ぜひ参考にしてください。

 もしもあなた、もしくは親が認知症になってしまったら、たとえ家族であっても、定期預金を勝手に解約できませんし、老人ホームへ入居させる契約もできなくなります。

 こういった問題を解決するために、成年後見制度があります。この制度は、判断能力を失ってしまった人の代わりに契約行為をする“後見人”を家庭裁判所が選任し、後見人は、その方のために財産管理や、老人ホームの入居手続などを行います。

 2023年12月時点において、成年後見制度の利用者数は約25万人。65歳以上の高齢者人口は約3600万人ですので、比率で言えば、利用されている方は少ない制度と言えます。

成年後見制度の基本

 成年後見制度は、「任意後見」と「法定後見」の2つに分類されます。

 任意後見制度は、今現在、判断能力が十分にある方が、自分自身の判断能力が低下した時に備えて、事前に自ら後見人を選んでおける制度です。誰に何を支援してもらうか具体的に決定したうえで、後見契約を結び、実際に判断能力が低下した時に後見を開始する形になります。この契約は必ず公証役場で行う必要があります。

 法定後見制度は、既に判断能力が低下して、自身で財産管理等を十分に行うことができない方に、本人に代わって配偶者や子どもなどが申立てを行い、後見人を選任する制度です。さらに、法定後見制度では、選任の申立てを受けた家庭裁判所が判断能力に応じて、「補助」「保佐」「後見」の3つの類型から適切なものを選択し、状況に応じた支援を行います。ちなみに、最も利用者数の多い類型が「後見」であり、利用者全体の約8割が利用しています。

 法定後見制度によって選ばれる後見人は、親族が18.1%、親族以外の弁護士や司法書士等が81.9%です。この数値だけを見ると、「親族は後見人になれないの?」という印象を受けますが、家庭裁判所によると、そもそも申し立て時点で、親族を候補者としている割合は22%しかいません。22%の申立てに対して、18%が実際に親族後見人として選ばれていますので、親族後見人を希望すれば高い確率で認められていることになります。

 2019年3月18日に最高裁から後見制度への方針として、“本人の利益保護の観点からは,後見人となるにふさわしい親族等の身近な支援者がいる場合は,これらの身近な支援者を後見人に選任することが望ましい”と明らかにされました。

 親族後見人の申立てが通らないケースは、本人がその親族候補者に後見人になってほしくないという意向がある場合や、親族内で後見人候補を巡るトラブルがある場合などが挙げられます。

 弁護士や司法書士が後見人に選ばれた場合、月額2万円以上の報酬が発生しますので、経済的に余裕のない方は、親族を候補者にしたほうがいいかもしれませんね。

 年末年始、相続について話し合った方もいらっしゃるかと思います。ぜひ参考にしてください。

(本原稿は『ぶっちゃけ相続 お金の不安が消えるエンディングノート』を一部抜粋・編集したものです)