預金の逆襲か。さらなる利上げ期待も

 マイナス金利時代の定期預金は、メガバンクで年0.002%程度、ネットでも0.02%ほどだったのだから、期間限定のキャンペーン金利とはいえ、それがいきなり0.85%まで引き上げられるとは驚きだ。この先一段と上昇があるかどうかは日銀の金融政策次第だが、昨年夏の0.3~0.4%が冬には0.6~0.8%まで上がったことを思えば、次回の25年夏キャンペーンで今回より低い金利を出すとは考えにくい。

 25年も物価高は続くと思われ、円安を抑えるためにも日銀は利上げタイミングを伺っていることだろう。もし、今年早々に利上げとなれば、25年夏にはさらなるキャンペーン金利の引き上げも十分予想できる。もし、1%を超えるような金利が出てくれば「貯蓄から投資へ」と聞いて預金から資金を動かしていたシニア層が、再び「やっぱり預金でいいか」と回帰の動きを見せるかもしれない。

 元本保証で金利が約束されているのが預金のいいところだ。積み立て投資により長期でじっくり資金を増やしていくのも、もちろん有効な方法だろう。しかし、資産が増減するのを好まない人や、1円も減らしたくない用途のお金なら、高金利の時を狙って1年物定期に預け、翌年満期が来た定期を、次のキャンペーンで1年物に乗り換えていく方法も悪くない(ただし、定期預金は固定金利であるため、複利効果はほとんど期待できない点は注意)。

 ここまでは定期預金の話だが、普通預金の優遇も加速している。こちらはいわゆる「経済圏競争」だ。ネット銀行大手の楽天銀行は、24年12月末に預金残高(単体)が12兆円を突破したと発表した。

 この銀行は言わずもがなの楽天経済圏の中心でもある。経済圏利用者向けの優遇として、25年3月から、「楽天ゴールドカード」「楽天プレミアムカード」「楽天ブラックカード」の利用金額引き落とし先を楽天銀行にした場合、通常で年0.12%の普通預金金利を0.13~0.18%に引き上げる。

 au経済圏では、通信プラン「auマネ活プラン」が好調だという。これはauマネ活プランに加入し、スマホ決済「au PAY」との連携、auPAYカードの利用料金の引き落とし、auカブコム証券(2月から三菱UFJ eスマート証券に改称予定)との連携などの条件を達成すると、最大で年0.41%まで普通預金金利がアップする。

 2社とも預金そのものを集めたいというよりも、経済圏への囲い込みが目的だろう。楽天はグループのサービス利用をいっそう促すこと、auは通信契約の乗り換えを防ぐこと等が優先事項だ。預金金利を上乗せしたとしても十分元が取れるに違いない。

 海外に目を向けてみれば、第二次トランプ政権の動きがネックになるだろう。その影響が日本経済にどう出るかは未知数だ。25年は日経平均の4万円台が日常となり「預金から貯蓄へ」が加速するのか、それとも利上げで預金金利がいっそう上昇し「投資から貯蓄へ」と守りに入るのか。我々はしばらく経験してこなかった悩みを抱えそうだ。

※金利は1月15日現在。税引き前