特にやり玉に挙がったのが、調査委員会の建て付けだった。日本弁護士連合会のガイドラインに沿った第三者委員会とし独立を高めるべき、との指摘に、港社長が明言を避けたことが大きく取り上げられた。調査が“隠れみの”“お手盛り”になるのではないか、というフジテレビへの不信感を隠さない報道だった。
通常は抑えたトーンで報じる一般紙も厳しかった。19日付日経新聞は社説で「女性のプライバシーに十分に配慮しつつも、調査結果は広く公表されるべきだ。17日の記者会見は必ずしもオープンなものとはいえなかった」と説明不足を指摘。さらに、朝日新聞は、「不信を払うには、社長の責任を含め、徹底した調査と説明が必要だ」と、一気に経営責任にまで踏み込んだ。
筆者は全国紙記者と企業広報の双方を経験しているが、メディアのこうした報道は言外に相手に“無条件降伏”を求めていることが多い。いわゆる「首を差し出す」トップ引責や役員・社員の大量処分はもはや避けられない情勢に見える。
極めつきは総務相のコメントだ。テレビ局は総務省が所管する放送法と電波法に基づいて事業を行っている。今回の問題は放送内容ではなくフジテレビの社内問題ではあるが、監督官庁のトップの発言は重い。
村上誠一郎総務相は21日の閣議後記者会見で、「できる限り早期の調査」を同局に求め、「独立性が確保された形」で行うことが重要だと指摘した。「スポンサーや視聴者の信頼回復に努めていただきたい」とも話し、社長会見への不満をにじませた。
スポンサー企業の危機管理で
一斉にCMを差し止め
会見の後、スポンサー企業が一斉にCM差し止めへ動いた。
自社の不祥事公表に伴い、企業が一時的に広告宣伝を差し控えることはよくある。その際は、広報部門が主導して経営陣や営業部門と協議することが多い。
広宣停止が決まれば、営業部門が広告代理店と連絡をとり、予定していたテレビ・新聞などの広告を止める。当然、枠が空くことになるため、急場の処置として公益社団法人ACジャパンの広告に差し替えられる。