広告料は返金されないのが通常であり、営利企業としては消費者の反応と失われる広告効果を天秤にかけて苦渋の対応をせまられることになる。
筆者が三菱自動車時代の2004年、リコール隠し問題関連の記者発表後、全国紙に新型自動車の全面カラー広告が載り、当時の中川昭一経産相に、「悪質であると同時に、あきれ返ってものが言えない」 と痛烈に批判されたことが忘れられない。
その後、大規模リコールなどネガティブな内容の発表に際しては、漏れなく広告宣伝を止める社内連絡体制が築かれたことは言うまでもない。
ところが、今回はメディア側の不祥事が原因という異例の事態だ。
ここで思い出すのが、2011年頃に盛んとなった反フジテレビのムーブメントだ。「韓流ごり押し」「捏造・偏向報道」などとの主張でデモ行進が行われるなどし、スポンサー企業にも広告出稿を取りやめるよう求める苦情電話が相次いだことがあった。
しかし、スポンサー企業は当時、批判や不買運動にさらされながらも、総合的に判断し、フジテレビからのCM一斉引き上げという事態にはならなかった。フジテレビの経営陣が各企業へ説明に回っていたことも信頼をつないだ。
スポンサー企業離反の背景には
“性的問題”への対応の難しさか
一転して今回、花王を含めスポンサーが容赦ない離反に動いたのはなぜだろうか?
会見の失敗が直接の引き金だろうが、どうやら、社会的に関心の高いセンシティブな性的問題を巡る対応の難しさも背景にありそうだ。
新聞・テレビなどいわゆるオールドメディアは、この種のデリケートな問題に踏み込むことを避けがちだ。
前述の朝日新聞社説が、「人気芸能人との関係を強めるために、女性を性的に利用していないか――。この点こそが、社会が同社に抱く不信感の核心だろう」と指摘しているのが目立つくらいだ。
一方で、今や世論、消費者を動かす力を持ったSNSでは、禁忌なく語られる傾向がある。X(旧twitter)などを覗いてみれば一目瞭然だろう。女性側の関心、嫌悪感が極めて強いことがよく分かる。