スポンサー企業が恐れるのは非難の矛先が自社へ向かうことにほかならない。今回は花王など大手企業のCM引き上げがいちはやく報じられたことで、雪崩現象が起きた。
仮に筆者がスポンサー企業の広報部門にいたとしても、会見翌日の報道をレポートし、経営陣へ当面のCM差し止めを進言するだろう。動きに遅れず、自社のコンプライアンス順守の姿勢を疑われないことを最優先とすべきフェーズだ。横並び意識と批判されそうだが、最悪に備えるのが危機管理というものだ。
フジテレビとして最大の懸念は、3月の番組改編期にスポンサー企業が 番組提供から下りてしまうことだろう。社内調査・処分が公表され信頼回復が図られるまで、スポンサー企業は模様眺めを余儀なくされるため、広告収入の長期的な落ち込みは避けられまい。
フジテレビにとって
信頼回復への道は遠い
企業不祥事においては、メディアの前に出て説明責任を果たし社会的制裁を甘んじて受けることが、信頼回復への唯一の道だ。
時には、抱え込んでいた過去の問題があまりに大き過ぎ、企業側への信頼がすっかり失われてしまうことがある。どんな説明も言い逃れと受け止められ、信頼という歯止めを失って報道は際限なくエスカレートする。筆者はこれを“説明責任の迷宮”と呼んでいる。
“迷路”からの脱出には、メディアとの信頼関係の再構築が必要だ。
フジテレビの場合、独立性の高い調査委員会による徹底調査と逃げ隠れしない公表が大前提だ。関係者の徹底処分も必要で、今回ばかりは、経営陣の交代なくしてメディアの理解は得られまい。なにより背後にある世論、監督官庁の納得する幕引きを探ることが、“迷路”からの脱出の処方箋と考える。
最後に明かすが、若かりし頃、筆者が危機管理広報を学んだ“師匠”の一人は、フジテレビの広報部長だった方だ。経営陣に直言し会社立て直しを主導するような広報部門の奮起に期待したい。