とはいえ、今回の米国当局との和解を受けて、22年の公表から3年間続いた一連の不正問題は、ほぼ終結した。また、今年に入り、関係者から「米国での民事・刑事でどの程度の額で決着できるかが、今後の動きにつながる」と聞いていたが、米国での制裁金は合計約12億ドルと、安くはないものの存亡に関わるほどの巨額負担は避けられることになった。

 一連の事件対応に一区切りがついたことで、無期限延期となっていた三菱ふそうとの統合協議も一気に進展しそうだ。1月30日には、日野自の25年3月期第3四半期決算発表会見が予定されている。この会見には、第3四半期決算としては異例の小木曽聡社長・CEOが出席する予定で、三菱ふそうとの統合協議の前進を示唆することになりそうだ。

日野自・三菱ふそう統合のキーマンは
元経産省幹部と豊田章男会長の腹心

 さて、日野自と三菱ふそうとの統合については、海外集団訴訟問題だけでなく、両社統合による国内での商用車の独占禁止法の問題をクリアするなどの課題もある。だが、いすゞ・UDトラックス対日野自・三菱ふそうの商用車2陣営への再編には、産業強化を狙う経済産業省の思惑も絡んでいることから、これらの課題については、経産省のバックアップも期待される。

 そこで、両社統合へのキーマンとして登場するのが、日本自動車工業会副会長・専務理事を長年務めた永塚誠一氏だ。実は、筆者の取材によると、永塚氏は次の三菱ふそうトラック・バスの会長に就任することが内定しているというのだ。

 永塚氏は、経産省自動車課長や商務情報政策局長の経験者で、自工会副会長・専務理事として14年5月から24年5月まで10年間在任していた。また、豊田章男・トヨタ会長の自工会会長としての3期を補佐して自工会改革を主導するなど、豊田氏からの信頼も厚い。自工会副会長・専務理事を退任後、現在はEV進出を発表した台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業子会社のシャープの社外取締役などに就いている。

 もともと、ダイムラーの子会社となって以来、三菱ふそうの社長はダイムラーから送り込まれているが、会長職は経産省出身者の事実上の“指定席”だ。