元々、日野自はトヨタが50.1%出資する子会社だ。ダイハツと共に、トヨタの連結子会社として、トヨタグループのトラック分野を担い、国内トラックOEMとしてトップブランドを確保してきた。だが、22年にエンジン認証不正が発覚し、少なくとも03年から20年間も不正な試験方法で型式指定を受けていたことが判明。国内・海外へ影響が広がったことで、日野自の存亡が問われる一大事につながってしまった。

 トヨタは、日野自問題の処理を“豊田章男会長マター”として扱った。日野自は一時、独フォルクスワーゲンの商用車子会社のトレイトンとの業務提携を進めたこともあったが、一転してダイムラー・トラックとの提携と、日野自・三菱ふそうの統合を決断した。23年5月の統合発表の会見には、ダイムラー・トラックら4社トップがそろって出席した。

 発表では、トヨタとダイムラー・トラックが同等に出資する持ち株会社を設立し、日野自と三菱ふそうがその子会社となる方式で、24年末までに統合完了させるとした。これを「トヨタが日野自を“身売り”した」と受け止める関係者も多かった。

 しかし、その後統合は無期限延期となってしまった。日野自の不正問題に伴う財務不安、特に米国、カナダ、オーストラリアでの集団訴訟による巨額の和解金のリスクなどで、財務状況に不透明さが残ったためだ。

 集団訴訟については、日野自は24年9月にカナダで約60億円、12月にオーストラリアで約85億円の和解金で合意したのに続いて、今年1月16日に米国でも民事・刑事両面での和解を発表した。民事制裁金として、司法省や運輸省などに4億4250万ドル(約677億円)、カリフォルニア州当局に2億3650万ドルを支払う(約362億円)。また、刑事面でも司法省に5億2176万ドル(約798億円)を支払うことで合意した。

 日野自の業績は、不正の補償費用なども影響して23年3月期まで3期連続で最終赤字だった。24年3月期は170億円の最終黒字に転じたが、今期の25年3月期は和解金などの特別損失2300億円を計上することで、再び2200億円の最終赤字となる見通しだ。