現在の松永和夫会長は元経産省事務次官であり、17年から会長職を務めている。また、松永氏の前は社長だったアルバート・キルヒマン氏が務めたが、さらにその前は元経産省自動車課長で自工会副会長・専務理事、中小企業基盤整備機構理事長などを歴任した鈴木孝男氏が務めていた。そうした経緯もあり、永塚氏が次期会長職として選任されたのだろう。
一方で日野自の人事にも注目だ。日野自にはトヨタの豊田会長の腹心で、トヨタのスポークスマン(前執行役員・渉外広報本部長)だった長田准氏が、昨年6月に取締役として就任している。
つまり、経産省や業界との太いパイプを持つ永塚氏と、豊田会長の意向をくみ取りやすい長田氏がそれぞれの経営陣に加わったことで、永塚・長田ラインの下、トヨタや経産省のバックアップなどを受けながら統合交渉が一気に進むというのが筆者の見立てだ。関係筋によると、今後、4月から6月の両社の株主総会などを経たのち、早期のタイミングで統合協議がまとまる公算が大きい。
日野自の統合相手の三菱ふそうであるが、同社は元々、三菱自動車のトラック・バス部門だった。90年代末の三菱自の不祥事により、三菱自とダイムラーが資本提携したことで、03年に「三菱ふそうトラック・バス」として独立。その後、三菱自が所有株式をダイムラーと三菱グループ会社に売却したことで、三菱ふそうは05年からダイムラーの完全子会社(現在はダイムラー・トラックが89.29%出資)となった。
また、ダイムラー・トラックは、19年11月にダイムラーAGの商用車子会社として分離独立した企業だ。ダイムラーといえば、日本では高級乗用車のベンツのイメージだが、ダイムラー・トラックは世界第2位のトラックメーカーであり、欧州では世界へ事業拡大するトラックブランドとして有名だ。三菱ふそうを子会社に収めたのも、三菱ふそうが日本とアジアの中・小型トラックとバス市場において、確固たる製造・販売力を持っているからだ。当初の三菱自工との資本提携は、元々「ふそう」が狙いだったという見方があるほどだ。