みなし仕入れ率80%未満の事業は
「2割特例」を選択した方が有利

 以下のいずれかに該当する事業者は、消費税および地方消費税の確定申告が必要となる。

・インボイス発行事業者として登録している(基準期間の課税売上高が1000万円以下であっても申告が必要)
・基準期間における課税売上高が1000万円を超える
・特定期間における課税売上高が1000万円を超える
・課税事業者選択届出書を提出している

 基準期間とは、個人事業者の場合はその年の前々年、法人の場合は原則として前々事業年度を指す。また、特定期間とは、個人事業者の場合は前年の1月1日から6月30日まで、法人の場合は原則として前事業年度開始日以後6カ月間を指す。

 24年分申告の場合、課税事業者は24年1月から12月に得た課税売り上げにおける消費税を25年3月31日までに確定申告をする必要がある。ただし、確定申告は期限後でも可能であるが、「期限を過ぎると本来納付すべき税額以外にペナルティーが課されるおそれがあるため、注意が必要」と、弥生プロダクトマネジメント部の大江桂太郎氏は話す。

 消費税の納付額は、売り上げに含まれる消費税分を全額納めるわけではなく、仕入れや通信費、交際費、会議費、パソコン導入などの経費にかかった消費税を差し引くことができる。これを仕入税額控除という。

 ここで重要なのは、消費税額の計算方法が以下の3通り存在する点である。

(1)本則課税(一般課税)

 本則課税は、売り上げで受け取った消費税から、仕入れや備品購入の際に支払った消費税を差し引いて納税額を算出する方法である。

 この方法を採用する場合、事前の届け出は不要だが、仕入れにかかった費用を詳細に計算し、それに含まれる消費税額を算出する必要がある。そのため、他の方法に比べて最も手間がかかる方法といえる。

(2)簡易課税(事前申請が必要)

 売り上げで受け取った消費税に、業種ごとに定められた「みなし仕入れ率」を乗じた金額を差し引いて、消費税の納税額を算出する方法のこと。みなし仕入れ率は、第1種事業(卸売業、90%)から第6種事業(不動産業、40%)まで、業種ごとに異なる設定がなされている。

 簡易課税制度を利用するためには、基準期間における課税売上高が5000万円以下であることが条件となる。

 また、簡易課税制度を選択するには、事前に税務署へ「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要がある。提出のタイミングについては、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに行う必要がある。

 なお、23年10月1日から29年9月30日までの間に、免税事業者がインボイス発行事業者として登録し、登録日から課税事業者となる場合、その課税期間から簡易課税制度の適用を希望することを明記した消費税簡易課税制度選択届出書を、該当課税期間中に提出すれば、その課税期間から簡易課税制度を適用できる。

 一度、簡易課税を選択すると、その後2年間は制度を変更することができないという制約がある点は要注意だ。また、本稿掲載時点で届出書を提出していない場合、25年分の確定申告からの適用になる。