……というようなことを主張していたのだが案の定、「文春の訂正遅れ」からのメディア不信が広がっている。今からでも遅くないので、テレビや新聞は、文春報道をロイターやAP通信の記事のように「メディアが自由に使えて、信頼のできるニュースソース」として依存をするのは控えるべきだ。

 そこに加えて、筆者が必要だと思うのは、メディア内部で働く人々が、世間の常識と著しくズレていることを自覚して、業界内でもう一度、メディアとは何か、ジャーナリズムの役割とは何かということを議論していくことだ。

 それを考えていくうえでひとつのヒントとなるのが、今回のフジテレビ会見において一般人たちが「通販新聞の佐藤真之記者」を評価していることだ。

 あの地獄絵図のように荒れた記者会見が5時間ほど経過し、怒声や罵声、さらには一方的な持論を述べるような質問が続き場内が殺伐とする中で、指名された佐藤記者はこのように述べたのである。

「一応、手を挙げた人が質問するルールなので、そこは守ってください。静かにしてください、マジで」

「記者の質」「記者のレベル」という批判的なワードがXでトレンド入りする中で、この発言に共感をする人が多く出た。それはつまり、一般社会の人々が、メディアやジャーナリストに期待をしていることは、刑事のような威圧的な取り調べではないということでもある。

 こういう「社会からの指摘」を真摯に受け止めて、マスコミだけではなくフリージャーナリストも含めて業界で意見交換をしていくべきだ。

 ちなみに私事で恐縮だが、佐藤記者とはかねてから交流があって、実は先週の金曜日もフジテレビ取材に関してアドバイスしてほしいと私の最寄駅まで来てくれたので、ホルモンを食べながら意見交換をした。

 通販業界紙としてこの問題をどう扱うべきかというところから、フジテレビというメディア企業の対応は何が問題なのか、ジャーナリズムとは何か、などこの業界の問題点について、2人で酒を酌み交わしながら話をしていたら、気がついたら4時間もたっていた。

 この時、強く感じたのは、佐藤記者が「自分の問題意識は正しいのか」「どういう切り口で取材を進めていくことが、読者の期待に応えることになるのか」ということを本当に真摯に悩んでいたということだ。きっと今も悩みながら、取材を続けている。