まず、国債の供給について検討すると、国債発行残高(ストック)は毎年の国債発行額(フロー)と償還額によって決まる。
そこで、政策的経費を税収などでどの程度賄えているかを示す指標である国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス。以下、PB)について、「(1)財政健全化が進んで2027年度にPBが均衡する場合(「PB:0%」シナリオ)」「(2)大和総研の中期見通しにおける予測期間の最終年度(2033年度)のGDP比▲3%程度で横ばいの場合(「PB:▲3%」シナリオ)」「(3)財政が一段と悪化し、2027年度以降のPBが同▲5%となる場合(「PB:▲5%」シナリオ)」という3つのシナリオを用意した。
内閣府が試算した2023年度のPBの実績見込みは同▲2.9%であるため、(2)は直近の財政状況が長期的に継続したシナリオともいえる。それぞれのシナリオに整合的な国債発行額と償還額を試算すると、いずれのシナリオでも国債発行残高は増加していく見込みだ。
だが、2040年度の水準を比較すると、「PB:▲5%」シナリオでは2600兆円程度となる一方、「PB:0%」シナリオでは1800兆円程度にとどまる(「PB:▲3%」シナリオでは2300兆円程度)。
国債の供給は拡大するものの
国内需要との間に差が
政府はPB黒字化を目指しているが、仮にPBを長期的に均衡させることができれば、国債発行額の抑制を通じて長期金利の安定化に大きく寄与することになろう。
いずれのシナリオでも国債の供給拡大が見込まれる一方、国内需要の増加幅は限定的となる可能性がある。「日銀」による需要(保有残高) は前掲図表7・8で示した通り、減少していく見込みだ。
「その他主体」の保有残高の見通しについては、「保険・年金基金」などの国債保有が名目GDPの拡大に合わせて増加していくと仮定して機械的に試算すると、「日銀」と「その他主体」の合計は2040年時点で足元の水準を下回る可能性が高い。
すなわち、日銀による国債保有減少の影響は大きく、足元での国債の保有構成を前提とすると、国内主体を中心とした国債保有の増加余地は小さい。
もっとも、日銀は銀行などから国債を大量に購入することで量的緩和を進めてきたことを踏まえれば、銀行には足元の保有割合分以上に保有残高を増加させる余地がある。