ウォルマート、マクドナルド、メタなどが
続々とDEIから撤退
この大統領令は連邦政府とその関係機関に限定されたものだが、約300万人の労働者を抱え、国内最大の雇用主でもある連邦政府のDEI廃止の決定は民間企業に大きな影響を与えることが予想される。実際、トランプ氏の再選を受けて(あるいは見越して)、DEIプログラムを縮小または廃止する企業が相次いでいる。
小売業最大手のウォルマートは昨年11月、DEIの取り組みを後退させると発した。具体的には下記などを行うという。
(1)女性やマイノリティが経営するサプライヤー(取引先)を優先する方針を撤回し、人種公平性に関する従業員の研修を取りやめる。
(2)社内コミュニケーションで使用する「DEI」という用語を、「ビロンギング(組織の一員であるという帰属意識)」に変更する。
(3)LGBTQの従業員のインクルージョン(包摂性)を高めるプログラムを中止する。
世界中に210万人を超える従業員(米国内で約160万人)を抱え、世界で最も多様性に富む企業の一つとされる同社がこのような決定をしたことは驚きをもって受け止められたが、その裏には保守派による批判と圧力があったようだ。それについては後で詳しく述べる。
また、大手ハンバーガーチェーンのマクドナルドも今年1月初め、上級管理職レベルの多様性達成に向けた具体的な目標の撤回や、サプライヤーに多様性研修の実施を奨励するプログラムの終了などを発表した。加えて同社の多様性チームは、「グローバル・インクルージョン」に改名されるという。
こうした動きはフェイスブックやインスタグラムを所有するメタ、アマゾンなどのテック業界にも広がっている。メタは1月初め、従業員へのメモの中で、「変化する法的および政治的状況を理由にDEIの取り組みを中止する」と述べ、大学入試における人種に関する連邦最高裁判所の判決を引用し、「多様性、公平性、包摂性」という用語が批判されていることにも言及した。
この判決というのは、トランプ大統領が1期目に任命した3人を含む保守派の判事が多数を占める連邦最高裁が2023年6月、黒人やヒスパニックの優遇策を「違憲」と判断したものを指している。最近のDEI批判の高まりの背景にはたしかにメタが指摘した通り、DEIに批判的なトランプ政権に象徴される政治的状況の変化に加えて法的状況の変化もある。