ベスト経済書・ビジネス書大賞2024#3

特集『ベスト経済書・ビジネス書大賞2024』(全7回)の#3ではランキング2位となった『人的資本の論理』の著者である小野浩・一橋ビジネススクール教授に、師事したゲーリー・ベッカー流の人的資本理論と日本経済の失われた30年の原因について話してもらった。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

ベッカー流の人的資本理論を
体系的に整理したい

 私が人的資本の研究を始めたのは、1992年にノーベル経済学賞を受賞したゲーリー・ベッカー先生の『Human Capital』 を読んだことがきっかけです。

【第2位】ベスト経済書・ビジネス書大賞2024!『人的資本の論理』著者が語る「ベッカー流理論」

 ページをめくって数式を見るたびに鳥肌が立つような感覚がありました。ベッカー先生が在籍していた米シカゴ大学に留学していた私は、志望して弟子になりました。

 3年前から人的資本理論の実証化研究会を続けています。そこで企業の方と接することで、それまで理論に傾倒しがちだった私が、今、人事の世界、働き方でどういった課題があるのかといったことに触れる機会が増えました。

 その頃から人的資本経営が注目され始めました。そこで、ベッカー流の人的資本理論を体系的に整理したいと思いました。

次ページでは、小野氏がベッカー流の人的資本理論に基づいて日本経済の失われた30年の原因を説明します。