「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』。「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。この記事では、本書より一部を抜粋・編集します。
![職場にいる「人生後半を寂しく過ごす人」と、「いつまでも活躍する人」の違い・ベスト1](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/2/4/670/img_24f10fa02b9d7b8069852811df41c859288614.jpg)
人生の後半を
サーバントリーダーシップという概念を生み出し、これを世界に広めたロバート・グリーンリーフは、当時、世界で最も大きな企業であったAT&Tの管理職を勤めながら、在野の独立研究者としてサーバントリーダーシップの研究に打ち込むというイニシアチブ・ポートフォリオを実践した人でした。
おそらくグリーンリーフにとって、AT&Tという巨大企業での出世は、さして動機づけられる人生の目標ではなかったのでしょう。
彼は50代……つまり本書の枠組みとしては「人生の秋のステージ」に入ったタイミングで、当時としては珍しかった早期退職によってAT&Tの職を辞してから、応用倫理研究センターというシンクタンクを設立し、以降、1990年に亡くなるまで、ハーバードをはじめとした大学での教鞭や執筆、あるいは独立系の組織・人材コンサルタントとしての活動を通じて、サーバントリーダーシップという概念の普及・啓蒙に努めました。
これが彼にとってどれほど動機づけられる仕事であったかは想像に難くありません。グリーンリーフの著書『サーバントリーダーシップ』の扉ページには、彼がこのコンセプトに込めた想いが短くも力強く語られています。
私は自分の人生をこの仮説に賭けてみたい。
なんとも羨ましいと思いませんか。人生の後半に「自分の人生を賭けてみたい」と思えるようなテーマに出会い、それを死ぬまで実践し続け、多くの人々を支援したのです。
グリーンリーフが提唱したサーバントリーダーシップのコンセプトは、筆者を含め「人生の秋」以降のステージにある人々に大きなインスピレーションを与えてくれるものですが、私には、それ以上に、このグリーンリーフの生き方そのものが、大きな勇気と明るい希望を与えてくれるもののように思えます。
本書では、さまざまな戦略コンセプトを共有しながら、自分が自分らしく働き、経済的にも社会的にも成功するための方策について考えてきました。しかし、どんなに成功したとしても、私たちはいずれどこかで第一線を退き、立場を後進に譲り、頼られなくなり、最終的に忘れられることになります。
このような状況をつらく、悲しいものとして受け止めて意気消沈するか、あるいは、他者を支援し、他者の成長や活躍に新しい喜びを見出すかで、人生後半のクオリティ・オブ・ライフは大きく変わってくることになります。
サーバントリーダーシップが訴えているのは「能力の低下する、つらくて苦しい人生後半期は端っこで支援者として過ごしましょう」などという消極的なものではありません。
むしろ逆で、他者を支援し、その成功を手助けすることで、金銭や名誉といった虚しいものでは得ることのできなかった大きな喜びが人生の後半期に得られるということ……フランク・シナトラの墓碑銘の言葉を借りれば「お楽しみは、これからさ」ということなのです。