「大手企業出身だからといって、ベンチャーで活躍できるとはかぎりません」
そう語るのは、転職エージェント「キープレイヤーズ」代表の高野秀敏さん。1.1万人以上のキャリア相談、4000社以上の採用支援の経験を持つヘッドハンターであり、「現場」と「経営者」の両方の視点で、「圧倒的に活躍する人たち」と関わってきました。
その高野さんがベンチャー流の「結果を出す働き方」をまとめた書籍『ベンチャーの作法』が刊行。発売たちまち重版し、“きれいごと”抜きの仕事論に、社員からは「ベンチャーにかぎらず全ての組織で役立つ!」、経営者からは「よくぞここまで書いてくれた!」と、SNSでも多数の感想が投稿されるなど異例の反響となっています。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「ベンチャー転職のリアル」についてお伝えします。

ベンチャーに転職して後悔する「中年ビジネスパーソン」が増加している、たった1つの理由Photo: Adobe Stock

大手企業からベンチャーへの転職者が急増している

 キャリアが浅いうちにベンチャーを選んだ人は、意外とうまくいきます。そこで求められる働き方を素直に受け入れられるからです。

 柔軟に環境に適応し、「結果フォーカス」の作法をインストールできます。

 反対に苦戦するのが、ベンチャー以外の会社から転職してきた中堅やベテランの人材たちです。

 最近では、社会人の経験を積んでからベンチャーに入社する人も増えました。
 とくに多いのが、大手企業の出身者です。

 エン・ジャパンが運営する若年層向け転職サイト「AMBI」の調査によると、21年4~9月に大企業からスタートアップに移った人の数は、3年前の18年4~9月と比べて7.1倍となったそうです。これは全体の転職者数の伸びである「3.8倍」を大きく上回っています。

希望退職に手を挙げる
中年ビジネスパーソンたち

 大きな要因が、近年の大手企業による「希望退職」の促進です。

 PBR1倍割れ(株価が安すぎて、時価総額が企業の純資産よりも低い状態)の企業が問題視されている昨今、大手も自社の企業価値を上げることに必死です。加えて、AIによる業務効率化も着々と進んでいます。

 そうなると当然、生産性の低い人材は不要になります。希望退職を募る会社が増えているのは、このためです。

 これに手を挙げる人の多くは40、50代の中年層です。

「今の会社にいても、面白みのない仕事が続くのは目に見えている」

 そう感じて、新しいキャリアへと挑戦する人が少なくありません。その年代だと大手企業への転職は難しいため、ベンチャーに挑戦する人が増えています。

大手出身者が「使えない」と言われる理由

 ですが、一般企業とベンチャーでは置かれた状況や求められる働き方に大きな違いがあります。

 そのギャップにうまく適応できない。つまり「結果フォーカス」の作法をインストールできず、経営者と意見が食い違ったりして、やがてひっそりと消えていくケースが多発しています。

「大手企業の出身だから、ベンチャーでも活躍できるはずだ」

 こんな想いを持って入社し、苦労している人を数多く見ました。

「大手企業で活躍していた人を採用したが期待はずれだった」

 知り合いの経営者からは、そんな声をいくつも聞きました。

 一度ぬるま湯につかると、その環境が居心地良くなってしまいます。その環境に、体が慣れてしまいます。

 そうならないためにも、なるべく早く、結果を出すための作法を身につけたほうがいいのです。

(本稿は、書籍『ベンチャーの作法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)