プレゼン資料は、「読ませるもの」ではありません。“込み入った話”を言葉だけで伝えようとすると、どうしてもまどろっこしい表現になり、非常にわかりにくい説明になりがちです。そんな時に必要なのは、伝えるべき内容の「本質」を、直観的に理解できるように「図解化」する技術。プレゼン資料は「見せるもの」なのです。そこで、累計40万部を突破した『社内プレゼンの資料作成術』シリーズの著者で、ソフトバンク在籍時には孫正義社長に直接プレゼンをして「一発OK」を次々と勝ち取った実績を持つ前田鎌利さんと堀口友恵さんに、プレゼン資料を「図解化」する技術を伝授していただきます(本連載は『プレゼン資料の図解化大全』から抜粋・編集してお届けします)。

【やりがちNG】その「箇条書き」のせいで、わかりにくい資料になってます!写真はイメージです。 Photo: Adobe Stock

対比するときは「箇条書き」より「ボックス化」

「図解化」の最も基本的なパターンは「ボックス化」です。

 やることはきわめてシンプル。ただ、テキストをボックスで囲って表示するという、ただそれだけのことです。

 しかし、これが効果的です。

 例えば、2つ以上のことがらを対比しながら説明する場合には、【図6-1】のように箇条書きで表現することもできます。

【やりがちNG】その「箇条書き」のせいで、わかりにくい資料になってます!

 しかし、【図6-2】のように「ボックス化」することで、より一層理解しやすくなることがおわかりいただけるはずです。

【やりがちNG】その「箇条書き」のせいで、わかりにくい資料になってます!

「記号+キーワード」で無限のバリエーション

 さらに、この「ボックス化」をベースに、2つ以上のことがらの「関係性」を図解するのも非常に有効です(図6-3参照)。このパターンはとても使い勝手がいいので、わかりやすいプレゼン資料をつくるうえで欠かせない手法だと思います。

【やりがちNG】その「箇条書き」のせいで、わかりにくい資料になってます!

 重要なのは、【図6-3】で示したように、「関係性を示す記号とキーワード」の組み合わせによって、多くのバリエーションをつくり出せることです。

一方向の矢印」を使えば、①のように、「影響」という言葉と組み合わせることで、「円安により輸入物資の価格が高騰している」という「因果関係」を示すこともできますし、②のように、「プレゼン」という言葉と組み合わせることで、「企画を提案してから承認される」という「プロセス(順序)」を示すこともできます。

 また、④のように「一方向の矢印」を組み合わせることで、「A社が納品して、B社が対価を支払う」という「取引関係」を示すこともできます。

 さらに、「双方向の矢印」を使えば、⑤のように「ライバル」という言葉と組み合わせることで、「A社とB社は競い合っている」という「対立関係」を示すこともできますし、⑥のように「影響」という言葉と組み合わせれば、「A社とB社はお互いに影響を与え合っている」という「互恵関係」を示すこともできます。

 また、⑦のような「記号」を使えば、「A社とB社は対等な関係で事業提携している」というニュアンスを伝えることができるでしょう。

 このように、「ボックス化」したうえで、「記号とキーワード」の組み合わせを工夫することで、2つ以上のことがらの「関係性」を視覚的に示すことができるのです。

「組み合わせ」で複雑な話もスッキリ説明できる

 ここで、応用問題を出しましょう。

 ここまでご説明してきた「ボックス化」の図解化スキルを活用して、次の“ちょっと込み入った話”をわかりやすく説明するスライドをイメージしてみてください。

【やりがちNG】その「箇条書き」のせいで、わかりにくい資料になってます!

 みなさんは、どんなスライドをイメージしましたか?

 私たちが考えたのは【図6-4】のような展開です。これをアニメーションを使って表現すれば、A社とB社がライバル関係を解消して、事業提携を結ぶに至った背景を、すぐに理解してもらえると思います。

【やりがちNG】その「箇条書き」のせいで、わかりにくい資料になってます!

 このように、「ボックス化」に「記号+キーワード」という図解を組み合わせることで、“ちょっと込み入った関係性”をわかりやすく伝えることができるようになります。

 非常に使い勝手のいい手法ですので、これをマスターしていただければ、プレゼン資料の表現力はみるみる高まっていくに違いありません。

(本稿は、『プレゼン資料の図解化大全』より一部を抜粋・編集したものです)

前田鎌利(まえだ・かまり)
1973年生まれ。ソフトバンクモバイルなどで17年にわたり移動体通信事業に従事。ソフトバンクアカデミア第一期生に選考され、プレゼンテーションにおいて第一位を獲得する。孫正義社長に直接プレゼンして幾多の事業提案を承認されたほか、孫社長のプレゼン資料づくりも数多く担当。2013年12月にソフトバンクを退社、株式会社固を設立して、プレゼンテーションクリエイターとして独立。2000社を超える企業で、プレゼンテーション研修やコンサルティングを実施。ビジネス・プレゼンの第一人者として活躍中。著書に『【完全版】社内プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』『パワーポイント最速仕事術』(すべてダイヤモンド社)など。

堀口友恵(ほりぐち・ともえ)
埼玉県秩父市生まれ。立命館大学産業社会学部卒業後、ソフトバンクへ入社。技術企画、営業推進、新規事業展開などを担当する中で、プレゼンの経験と実績を積む。2017年に株式会社固へ転職し、スライドデザイナーとしての活動を始める。企業向け研修・ワークショップの担当や大学非常勤講師のほか、大手企業などのプレゼンのスライドデザインを担当し、のべ400件以上の資料作成やブラッシュアップを手がける。前田鎌利著の『プレゼン資料のデザイン図鑑』『パワーポイント最速仕事術』のコンテンツやスライドの制作にも深く関わった。ITエンジニア本大賞2020プレゼン大会にて、ビジネス書部門大賞・審査員特別賞を受賞。小学生向けのオンライン講座「こどもプレゼン教室」を運営し、子どもたちのプレゼンスキルアップの支援も行っている。