60代を襲う不安に押しつぶされない!「悩みを話してスッキリする」 自己開示の心理的効用4つ写真はイメージです Photo:PIXTA

人はなぜ、悩むとだれかに話したくなるのでしょうか? それには、自己開示の持つ心理的効用が関係しています。本稿では、悩みを他人に語ることで得られる4つの心理的効用について説明します。※本稿は、榎本博明著『60歳の地図:「振り返り」が人生に贈り物をもたらす』(草思社)の一部を抜粋・編集したものです。

悩むときだれかに話したくなるのはなぜか

 ふだん自分の内面を人に話すことなどほとんどない人でも、悩み事を抱えていると、無性に話したくなることがあります。逆に、いつもは自分の内面を見せることなどない人から、突然悩みごとを打ち明けられたことがあるかもしれません。

 人はなぜ悩むとだれかに話したくなるのでしょうか。そこには自己開示の持つ心理的効用が関係しています。

 自己開示というのは、自分について知らせることを指します。過去に経験したことや最近経験したことについて話したり、自分の生い立ちを話したり、日頃の思いを話したり、うれしい出来事について話したり、腹立たしい出来事について話したり、将来の夢について話したり、相手に対する気持ちを打ち明けたり、自分の性格的特徴について話したり、自分の価値観について話したりするのは、どれも一種の自己開示といえます。

 そうしてみると、よく自己開示している人も、あまり自己開示していない人もいると思いますが、まったく自己開示をしたことがないという人はいないでしょう。

 自己開示には、さまざまな心理的効用があります。私は、自己開示の心理的効用をつぎのように四つに整理しています。

1.自己明確化効果(自己洞察効果)
 自分自身の経験を振り返りつつ語ることで、また相手の反応を通して、自分の心の中で起こっていることについての理解が深まっていく

2.カタルシス効果
 自分の思いを語ることによって情動が発散され、気持ちがすっきりする

3.不安低減効果
 不安な気持ちを語るのを相手が受容的に聞いてくれることにより、他の人も同じような経験をしていると知ったり、自分が異常ではないとわかったりして、不安が和らぐ

4.親密化効果
 自分の経験や思いを語ることによって、自己開示の相互性が働き、心理的距離が縮まり、親密感が高まっていく

 自分のことは身近過ぎるのか、なかなかわからないものですが、友だちなどに自分の思っていることや悩んでいることを語ることで、つまり心の中のモヤモヤを相手にわかるように話そうとすることで、気持ちが整理され、自分がどうしたいのか、何が問題なのかがはっきりしてくることがあります。これが自己明確化効果です。