中国の難関大学に入るより、東大のほうがずっと簡単
そもそも中国人の教育熱はどのように生まれたのだろうか?
中国のトップ大学の卒業生で、子供を東京で最難関の私立中高一貫校の一つに通わせている女性によると「北京大学のような中国の難関校に合格するよりも東大に入るほうがずっと簡単」だそうだ。「まず学齢人口の規模が全然違います。そして中国人は全員が『鶏娃(ジーワー)』です。日本でそういう人は一部だけですから」
「鶏娃」という俗語は、極端に教育熱心な親のことを指す。学問で官僚を選抜する「科挙」の伝統がある中国には、教育しだいで運命は変えられるという考え方が強く根付いている。
新中国成立後も、1990年代ごろまでは努力次第で底辺から上に登りつめられるという感覚があった。 だが、いまや特権や「関係(グアンシー)」がなければ良い学校に入れないという風潮ができつつある。また中国の全国統一試験では長年芸術加点があったこともあり、子供にバイオリンやピアノなど日替わりで習い事をさせることが一般的になった。教育のコストはうなぎのぼりだ。
中国人の過激な教育方針を描き、米国でベストセラーになった2011年刊行の『タイガー・マザー』の作者で、在米華人エリートのエイミー・チュアはこのように説いた。
(中略)
中国人の子供がBを取ったと仮定するならば……まずあり得ませんが……まずは叫び声をあげ、次に頭をかきむしって感情を爆発させることでしょう。打ちひしがれた母親は、数十の、いえ数百の練習問題を準備して、子供がAを取るまで、つきっきりで勉強させることになります。
現在、子供を中学受験させているのは留学生出身の長期在住者が主体だ。いま中国からは新たに日本への移住を目指す「新移民」の動きが加速している。いずれ彼らが中学受験に参戦することがあれば、戦線はますます過熱するかもしれない。
そこでの勝者は、私立のトップ校を経由してさらに名門大学を目指すだろう。中国にルーツを持つ人々がやがて日本のエリート層に大きな地歩を占めるようになることを予感させる。