世界で注目を集める話題作がついに日本に上陸した。アメリカでベストセラーとなり、多くの共感と絶賛を集めた『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』だ。著者のブラッド・スタルバーグは、マッキンゼー出身でウェルビーイング研究の第一人者。柔軟でありながら芯を保ち、たくましく生きるための実践的な方法を明かしている。この記事では本書の内容をベースに、「感情に振り回されず、冷静な判断ができる人」になる方法を紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

「また余計な一言を」感情的な発言を繰り返す人と常に冷静な人、思考回路に決定的な違いPhoto: Adobe Stock

「言わなきゃよかった」を防ぐ!感情コントロール1つのコツ

 仕事で理不尽なことを言われ、ついカッとなって言い返してしまった。あるいは、家族や友人と口論になり、感情的になって心にもない言葉をぶつけてしまった。

 後になって「余計なことを言わなければよかった……」と後悔したことはないだろうか。

 感情に任せて発言してしまい、「言わなきゃよかった」と後悔するのは誰にでもあることだ。

 人間関係を円滑にし、自分自身の後悔も減らすために、感情のコントロールがとても重要なことは言うまでもない。

 とはいえ、「冷静になろう」と思っても、気持ちがたかぶっている時には難しいもの。そんな時に有効なのが「感情に名前をつける」ことだ。

感情を整理するための「ラベリング」

 ウェルビーイング研究の第一人者スタルバーグの最新刊『Master of Change 変わりつづける人』では、感情に名前をつけることの重要性が強調されている。

 感情がたかぶった時、一瞬、間を置くことが大切だ。しかし、実際には感情に飲み込まれ、冷静な行動を取れないことも少なくない。

 そのような時、自分の感情に名前をつけることが有効だとスタルバーグは述べている。

 一瞬、間をおくことは誰にでもできる。だが、感情が高ぶっている時は、感情に飲み込まれて、瞬く間に反応のスパイラルに巻き込まれがちだ。

 状況、特に難しい状況をきちんと整理するには時間と距離が必要だ。そのためには自分の感情に名前をつけることをお勧めする。

(P.250-251)

 これは「ラベリング」と呼ばれる手法だ。ラベリングをすると、感情に飲み込まれにくくなり、より落ち着いた対応ができるようになる。

ラベリングが感情を落ち着かせる理由

 実際に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究では、感情に名前をつけた被験者は、身体のストレス反応が低く、脳の扁桃体(感情を司る部分)があまり活性化しなかったことが明らかになっている。

 自分の感情を意識して名前をつけた被験者は、生理的覚醒(次に何が起きるかを予測して、胸がドキドキするなどの生理現象が起きること)がさほど起きず、扁桃体(感情に関わる脳の領域)もそれほど活性化しなかった。感情ラベリングをした被験者たちは、気が楽だったと報告している。

(P.251)

 この研究からも、「今、自分は怒っている」「私は今、不安だ」と言葉にするだけで、心が落ち着きやすくなることが分かる。

感情の名前は具体的に

 ラベリングの効果を高めるためには具体的な言葉を使うことが大切だ。

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究者たちは、感情の名前が具体的であればあるほど──たとえば、「さみしい」よりも「恋しい」、「不安」よりも「張り詰めている」など──人々は自分の感情にもその状況にもうまく対応しやすくなることに気づいた。

(P.253)

 例えば、

・「イライラする」よりも「無視された気がして、腹立たしい」
・「落ち込む」よりも「努力が認められず、がっかりした」

 と表現することで、自分が何に反応しているのかを自覚しやすくなる。感情に流されるのではなく、冷静な行動をとる余裕が生まれるのだ。

 次に感情がたかぶった時には、ぜひこの「ラベリング」を試してみてほしい。自分の感情に名前をつけるだけで、心が落ち着くことを実感できるはずだ。

 そして、具体的に言葉にすることで、自分の感情をより深く理解し、適切に対処できるようになるだろう。

※本稿は『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』より一部を抜粋・編集して構成しました。