半導体の重要性は近年増すばかりですが、大量の半導体を必要とする生成AIの普及により、政治的にも経済的にも一層の注目を集めることになりました。一個人にとっても、今や半導体についての知識はビジネスや投資で成功するために欠かせないものとなっています。
この連載では、今年1月に新たに発売された『新・半導体産業のすべて』の一部を抜粋・編集し、「3分でわかる世界の半導体企業」をコンセプトに紹介していきます。今回は、どこよりも半導体の製造現場を知り尽くすと言われる「KLA」について解説します。

KLAPhoto: piter2121/Adobe Stock

半導体工場で不可欠な役割を果たす

KLA
売上高 96億ドル(2023年)
従業員 1万5000名

 KLAはカリフォルニア州ミルピタスに本社を置く、アメリカの半導体製造装置の会社です。同社は主に、半導体の製造工程におけるプロセス制御や歩留まり管理のための欠陥検査装置・計測装置を開発・製造・販売しています。以前、同社はKLAテンコール(KLA-Tencor)と呼ばれていましたが、2019年に現社名に変更しています。

 半導体製造装置メーカーとしては世界ランキング5位で、マスク検査装置や生産管理システム、プロセスモニターシステムなどに強みがあります。特にプロセスコントロール分野では世界シェアの50%強を占め、半導体検査装置の王者といえるでしょう。

 筆者が現役だった頃、KLAに関して次のような噂が流布されていました。「KLAの装置・システムは大手半導体企業のすべての工場に入っていて、各工場の稼働状態(故障や事故の有無、稼働率など)のデータが随時、KLA本部にネットで送られ、把握されている。へたをすると当事者の半導体メーカーの人よりKLAの方が工場の状況についてよく知っているかもしれない」というものでした。

 もちろん半導体メーカーとKLAの間の厳しい守秘義務契約によって、それらの情報が外部に漏れることはなかったでしょうが、そんな噂が流れること自体、半導体工場のオペレーションにおいてKLAの果たしている役割がいかに大きなものかを、改めて感じさせられます。

 そんな王者KLAでも、EUV露光用マスク検査装置に関しては、それほど得意ではありません。

 それに対し、日本のレーザーテックはEUV用マスク(レチクル)検査装置で世界シェアをほぼ独占し、さらにEUV露光の普及に伴い、業績を大幅に伸ばしているのと対照的で、その部分が検査装置の王者のアキレス腱と言えなくもありません。

 2015年にラムリサーチがKLAを合併・買収するという発表がありましたが、翌年、アメリカ規制当局が無効と判断して断念しています。それ以前にも、当時、半導体製造装置メーカーの1位、2位であったアプライドマテリアルズ(AMAT)と東京エレクトロンの経営統合に対してアメリカ司法省の承認が下りず、計画は頓挫しました。これらのケースでは、独占的巨大企業の誕生に対する懸念が当局に働いたものと推測されます。