物価が上昇し、将来を不安に思う20代は少なくない。だが、「将来のために」と節約しすぎて今を犠牲にしても幸せとはいいにくい。「とにかく節約して貯めなきゃ!」というプレッシャーを感じず、罪悪感なくお金を使うにはどうしたらいいのか。ファイナンシャルプランナーの中村芳子氏は、著書『[新NISA・iDeCo対応版]20代のいま、やっておくべきお金のこと』で、20代がお金と健やかにつきあうためのヒントをいくつも紹介している。「かけていい金額の目安」を知っておくことも、そのひとつだ。(文/上田ミカコ、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

バランスの悪いお金の使い方をしていませんか
実家を出てひとり暮らしをすると、思った以上に生活コストがかかることに驚く。
社会人になりたての20代は、家賃や生活必需品だけで、カツカツになることも多いだろう。
さらに今は、物価も上昇している。自炊で節約しようにも、米も食材も高いのだから困ってしまう。20代でなくてもスーパーでため息が出る。
だが、「この先どうなるか不安だから」「少しでも貯蓄や投資に回したいから」と、食費を削りすぎたり、やりたいことをあきらめたりしてまで節約にはげむ若者を見かけると、少し心配になる。
もちろん、入ってきたお金を何も考えずに全部使ってしまうのはよくない。だが、極端にお金を使わない生活に走るのも、健やかとは言いにくい。
そんな「お金とまだ上手につき合えていない」若者に知ってほしいのが、中村氏が伝える「かけていい予算の目安」だ。
「予算の目安」が日常の使いすぎやガマンを減らしてくれる
中村氏の提案する「かけていい予算の目安」とは、たとえば家賃は手取り月収の何パーセントぐらいが適正かを示すものだ。
この「かけていい予算の目安」は、下の表にあるように、ボーナスがある人、ない人で少し変わってくる。食費なら、ボーナスがある人は10パーセント、ない人は8パーセントという具合だ。
各項目がこのパーセント以下に収まっているかチェックしよう。(P.64)
この「かけていい予算の目安」と、今の自分の支出と比べることによって、どの出費が多すぎるのか一目瞭然になる。
本書では、どちらかといえば、「使いすぎないための指標」として語られているが、裏を返せば「使っていい目安」でもある。
たとえば、交際費(趣味費含む)の目安は15パーセントとある。
もちろん、他の出費との兼ね合いもあるが、手取り月収が20万円なら3万円は飲み会や好きなことに使っていいということ。なんでもかんでもガマンする必要はないのだ。

お金と健やかにつきあうための一手
自分が使っていい金額の目安を知るために、まずクリアしたいのが自分の収入や支出の把握だ。
家計管理の基本中の基本とされる、「現状の把握」である。時代がどう変わろうと、このスタートポジションは変わらないようだ。
ちなみに中村氏によれば、「何にいくら使っているのかわからないのは、お金が苦手な人の共通の悩み」だという。
極端な節約に走って体調やメンタルを崩してしまっては、貯金どころではなくなる。とりあえず、今の収入と支出を記録してみよう。
家計簿アプリを中村氏は勧めている。スマホにダウンロードし、銀行やカードと連携すれば、手間をかけずにデータを集められるからだ。
口座から引き落とされる家賃や光熱費はもちろん、カードで払った食費などは店名も記録してくれるから、振り返りもしやすい。
自分の支出を見ると、「こんなに使ったのか」とへこむこともある。正直しんどい部分もあるが、「何にいくら使っているかわからない」を卒業しなければ、いつまでも不安は消えない。バランスのいい使い方もできない。
まずは、一歩踏み出そう。