そう言うと、「旧統一教会問題と山上の事件は関係ない。あの教団が潰されるのは時間の問題だった!」とかなんとか言ってくる人もいるが、一般人ならばその程度の認識でもいい。

 ただ、マスコミだけはそういうデタラメは口が裂けても言ってはいけない。

 一般の方は「安倍三代と統一教会の蜜月」「自民党とズブズブ」みたいな話というのは、山上被告が事件を起こしたことで明らかになったと思っている人も多いだろう。ネットやSNSでは「山上が闇を暴いた」「彼が事件を起こしてくれたおかげで知れたこともたくさんある」と称賛する声が多いのはその証左だ。

 実はマスコミにとってこのような話はすべて30年以上前からわかりきっていた。今、報道されていることは、旧統一教会問題を長年追及しているジャーナリストの有田芳生さんなどがずいぶん前から言っていることのリバイバルだし、かつては国会などでも追及された。

 では、なぜ「旧統一教会問題」が世間の注目を集めなかったのか。

「安倍元首相が政治力で警察やマスコミを抑えていたから」とか言う人がいるが、単刀直入に言えば「数字が取れない地味なネタ」だからだ。要は、安倍元首相の事件が起きるまで、大多数の国民にとって旧統一教会などどうでもいい存在だったのだ。

 当たり前だ。多くの宗教団体が相乗りする「日本会議」に象徴されるように、そもそも自民党の政治家はさまざまな新興宗教の支持を受けている。安倍元首相も然りで、ご本人が告白しているように「崇教真光」の信者だ。教団の会報誌によれば、石原伸晃氏と山本幸三氏に誘われたという。

 また、20年ほど前、安倍元首相は新興宗教のような経営コンサル会社「慧光塾」との関係が取り沙汰されていて、筆者も取材して記事にしたことがある。こういう自民党議員の「政治と宗教」ネタは、枚挙にいとまがない。なので、銃撃事件までは「闇」でもなんでなかった。

 その時代の空気感がよくわかるエピソードがある。実は筆者は2017年夏、ある大手出版社に「国際勝共連合と安倍晋三首相」というテーマの書籍企画を持ち込んだ。国際勝共連合というのは「自民党とズブズブ」と批判されている、旧統一教会の関連団体だ。