これが「老化」です。そしてついには多重債務になり返済不能となると、「死」に至ります。比喩的なお話をしましたが、現在の医学では、生きることで必然的に生まれるこの「老化負債」について、その科学的な実態が明らかにされつつあります。

 生物にとって、「死」は必ず訪れます。死の原因はさまざまです。

 2019年、全世界で最大の死因は虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)であり、全体の16%を占めています。脳卒中および慢性閉塞性肺疾患が、第2位および第3位であり、それぞれ総死亡の約11%および6%です。

 第4位は、下気道感染症で、呼吸器の感染は世界で最も致死的な伝染病(感染性疾患)です。高齢者、とくに寝たきりの方の肺炎は大きな問題です。

 アルツハイマー病などの認知症が死因の第7位となりました。女性に偏っています。これは、女性のほうが長生きであることが原因の1つと思われます。第8位は下痢性疾患で、さまざまな細菌、ウイルス、寄生虫などで汚染された食べ物や飲み水により起こり子どもの死因として重要ですが、衛生状態の改善で減少傾向です。第9位に糖尿病が入り、男性死亡の最大の増加の原因となっています。そして、腎臓病がトップ10入りしました。

日本人の死因トップ3は
がん、心疾患、老衰

 このように、主要な死因トップ10のうち7つが生活習慣によって起こるメタボリックドミノの疾患で、これら7つが全死亡の44%または上位10位の80%を占め、深刻な医療問題になっています。しかし、世界的には公衆衛生管理がまだまだ不十分で、感染症が依然トップ10に残っています。

 また、こうした“病気”だけではなく、世界から注視されながら、いまだ継続され、激化の懸念もある紛争・戦争や、今後は最大の人類の危機になることが危惧される、気象問題、飢饉・災害も死に直結する重要な課題です。

 事実、これまで人類の平均寿命は順調に延びてきましたが、新型コロナウイルス感染症が発生した2019年以降、経済活動が縮小し、収入が減ったことなどにより、アメリカ、ブルガリア、スペイン、リトアニアなど少なくとも27の国で平均寿命が減少に転じました。