つまり、日清がCMで「炎上→不買運動」を繰り返しているのは、反省をしていないとか、過去に学ばないとかではなく、ごくシンプルに「そういうブランド戦略だから」なのだ。

「財界の顔」として炎上する…
サントリーのお約束

 これと対照的な理由で「炎上→不買運動」を繰り返しているのが、サントリーである。

 先ほども触れたが、サントリーが炎上している主な理由は、新浪会長の発言だ。

 安倍晋三元首相の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会にサントリーが15万円程度の酒類を無償提供していた問題から不買運動を続けている方もいらっしゃるようだ。しかし、新浪会長が「45歳定年制」を提案したり、現行の保険証が廃止される24年秋を「納期」と表現し、「納期を守るのは日本の大変重要な文化」などと発言したときのほうが批判も盛り上がり、SNS不買運動も活気付いている。

 つまり、世の中が「サントリーが炎上して不買運動されている」というものの多くは、実態としては「新浪会長が炎上している」というものなのだ。

 そこで気になるのは、なぜ新浪会長の発言は炎上してしまうのかということだ。これはまずご本人のパーソナリティ的に「踏み込んだトーク」をしがちということもあるのだが、多くのメディアから「問題発言待ち」されていることも大きい。

 わかりやすくいえば、記者会見などの発言を一語一句厳しくチェックされ、少しでも攻めた発言、誤解を招くような発言があれば、そこをチョキンと切り取られて「舌禍騒動」にされてしまうということである。

 なぜそんなことのターゲットにされているのか。それは、もともと三菱商事、ローソン社長を経てサントリー社長というピカピカのキャリアで注目されていたということもあるが、2023年4月に経済同友会の代表幹事に就任したことが大きい。

 ご存じのように、経済同友会の代表幹事は政治にも影響を及ぼす「日本財界の顔」だ。そのため、メディアからは国際問題から社会問題、そしてフジテレビ問題のようなことまで幅広く意見を求められ、その発言はテレビや新聞でも報じられる。

 しかも、新浪会長はマイナ保険証、国民皆保険、フジテレビの広告出稿問題など「可燃性の高いテーマ」もぼやかすことなく自分の意見を表明する。ただ、マスコミ報道は「短信」が基本なので、質問や前後の文脈を無視して発言のインパクトの強い部分がチョキンと切り取られて、見出しなどで大きく煽られてしまう。とにかく誰かを叩いてスッキリしたいSNS民の格好の餌食になってしまうというワケだ。