こんなことをもう何十年も繰り返しているので、「炎上→不買運動」には他企業よりも耐性がある。しかも下の記事でもまとめているように最近のSNSで一部が盛り上がるだけの「エア炎上」とそれに伴う不買運動というのは、株価にはそれなりに影響を及ぼすが、現実の販売へのダメージはほとんどない。

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 実際、日経クロストレンドがサントリー不買運動の影響を分析した『「#サントリー不買運動」は効いているのか? POSデータで検証』(23年12月18日)によれば、SNS上で不買運動が盛り上がっているときのサントリーの主要7カテゴリーを見ても、「売り上げに影響を及ぼしている気配はない」と結論付けている。

 以上を踏まえると、日清とサントリーという2つの企業の「炎上→不買運動」はこれまで通り継続していく可能性が高い。理由はそれぞれ異なるが、共通しているのはSNSで「不快です」「もう買いません」とボロカスに叩かれても、「本業」に関してはそれほど痛くないということだ。

 不買運動を頑張っている方たちは株価が下がったことで「勝利宣言」をするが、株というのはそもそも上がったり下がったりするものだ。事実、サントリーもSNS上で不買が呼びかけられていた23年10月20日には4378円まで下げた。しかし、ほどなくして持ち直し、24年2月には普通に5000円台を突破している。瞬間風速的に株価にダメージを与えても、「実害」がないので企業価値まで暴落することはないのだ。

 一方、日清のようにしたたかな企業の場合、そのような不買運動の呼びかけでさえ「話題化」としてポジティブに捉えている向きもある。

 不買運動というのは消費者の意志を示し、社会を変えられる有意義なアクションだ。しかし、些細なことで「不買だ!」と運動を乱発すると、世間は「なんでもかんでも反対してるじゃん」と興ざめして、大衆の共感を得られなくなってしまう恐れもある。

 SNSで社会を変えようという方たちはぜひそのあたりを踏まえて、最大の効果が見込めるような形で、実りのある不買運動を仕掛けていただきたい。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

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